第10話 爆裂戦隊ゲテモンジャー


 大塚君が、僕をじっと見て言った。

「石井、俺と勝負しろ」


 大塚君の表情は、怒っている訳でもなく、淡々としていた。

ただ、心に決めたことを淡々と言葉にしているっていうか。


 なんか聞こえたけど、聞き間違いだよね。

「え゛?、何? 」


 僕は、今度こそ聞き間違えちゃいけないと、耳に人差し指を入れて、ほじりながら尋ねる。耳に水が入っちゃってね。


「石井、俺と勝負しろ」

あれ? 聞き間違いでない…。

僕の心の空がどす黒い雲で覆われ始めた。


 ハッと、僕は両手に持ったビート板を掲げて見せる。

「ほら、これ。僕、カナヅチだから」

わかって欲しいの。 [けのび]だけなの。


 大塚君は、ビート板に目をやってすぐに戻した。

「25mで勘弁してやる」


 カナヅチだって言ってんだろ(-_-;)と思いながら、僕は譲歩する。

「・・・け、[けのび]競争で良いなら…」


 大塚君は、ちょっと黙った。それから言った。

「俺はクロールだ。お前はそれ使えば良い」

大塚君は、僕の持つビート板を見た。ビート板を使って良いらしい。


 逃げたい。逃げれないのか、これ。

僕の心の中のどす黒い雲から、雷が鳴り、激しい雨が降り始めた。


 僕は苦し紛れの質問をする。

「って言うか、何で勝負を…?」

まぁ、判っちゃいるんだけども。


「・・・爆裂戦隊ゲテモンジャー知っているか?」

大塚君は、なんか関係ないことブッ込んで来た。


 僕は仕方なく頷いて話しを合わせる。

「・・・うん。やたら爆発して、ゲテモノ怪獣が出てくるやつだよね」

ここプールの水の中なんだけど・・・。この話題?


 大塚君は大きく力強く頷き、話を掘り下げる。

「戦隊メンバーの赤、青、緑は?」


 僕は頷いて質問に答えた。

「確か、飲む、打つ、買うだっけ? 赤は変身前から赤ら顔なんだよね。青は負けが混むんで青い顔だっけ? 黄は・・・」


 大塚君はニヤリと笑って、話を受ける。

「黄色が食べる、ピンクが眠るだ」


 そうなんだ・・・。


 菊っちゃんがポツリと「人間の5大欲求なんだな・・」と言った。


 僕は、ゲテモンは何処へ行ったんだろう…と、青い空を見上げる。


 大塚君も遠い目で、プールサイドの上に乗っかている入道雲を見つめた。

「俺は青の名セリフが好きだった」


「あぁ…、『切った貼ったが人生よ』だっけ?」

賭け事はいけないと思います。


 大塚君は、僕に視線を戻して話を続ける・

「母さんに泣かれた。正義の味方を目指したアンタは何処に行ったんだって」


「重い話だね・・・」

賭け事が好きなヒーローなんだけどね・・・。


「お前に言われた、『男なら自分よりデカい奴と勝負しろ』という言葉も心に刺さった」


「・・・なんかウチのがすいません…」。

菊っちゃんなんです。すいません。


「だから、俺は正義の味方を目指す!」


「そ、それは良いねぇ・・・、良いと思うよ!」

この話で初めて心の底から頷くことが出来た。

僕の心のどす黒い雲が灰色に変わり、雲の切れ間から日の光が差し始めた。


「だが。俺は青に憧れた男だ。負けたままじゃ終われない…、勝負しろ」


 『勝ち逃げは許さない』みたいな考えは止めませんか?

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