第38話 ウーヴェ現る

「スクエ、これで罠は何個だ?」

「三つだな……」


 スクエの職業が分からない為、結局は以前グロックを倒した時と同じ様に罠をせっせと作る二人。


「作らないよりマシだけど、あんまり意味なさそうだな……」

「つべこべ言ってないで作るんだ」


 スクエの言葉が正しい事は分かるノラであるが、今は手が無い為、罠を作るしか無い。


「相手は六人──そして罠は三つ……ふむ、二人計算で全滅だな」

「……」


 ノラの単純な計算にスクエは唖然として見る。


「ん? ──なんだ?」

「い、いや──見た目は白衣なんか着て賢そうだけど、中身は賢く無いんだ──イテッ!」


 スクエが何かを言い終わる前に武力を持って黙らせるノラであった。


「ふふ──どうやら勘違いしている様だな?」

「な、何がだよ」


 ノラの不敵な笑みにスクエは少し身構える。


「私は、賢い──何故ならメンタルチップを作ったからな! それだけで無く更にはマインドチップまで作った、この私が賢く無い訳が無い!」


 言いたい事は分かるが、言っている事は馬鹿丸出しである。


──ノラの奴、前からこんな感じだったか?


 何やら、壊れる前と壊れた後のノラの違いに少し違和感を感じながらスクエは罠を仕掛ける為に更なる山を探し始める。


「いいか、スクエ──私は本気を出せばなんだって出来るが、今は私の土俵と言うべき研究室が無い──」


 何やら後ろでブツブツスクエに話し掛けて居るノラであったが、完全に無視をして罠作りに集中するスクエであった。


 それからも二人は歩き回り、色々探すが結局何も見つけられず一度ドラム缶の家に戻ることにした。


「やはり二人計算……」

「──無理に決まっているだろ……」


 二人が話しながら歩いていると、山の崩れる音が響き渡る。


「「──ッ!?」」


 二人は素早い反応で直ぐに音の方に向く。


「──今のは入り口の罠か?」


 ノラの呟きに頷くスクエ。


「あぁ──とうとう来た様だな……」

「スクエよ先ずは様子見かな?」

「そうだな──取り敢えず相手にバレない様に移動しよう」


 こうしてスクエ達は急いで入り口に向かう。


 程良く近くにいた事もあり、直ぐに侵入者の姿を発見する。


 そして、隠れる様にして様子を伺うスクエ達。


「おいおい、マジかよ……」

「スクエ……お前は計算出来ないのか? ──6人どころか20人くらい居るぞ?」


 スクエとノラの視線の先にはロメイとウーヴェが居た。


 しかし、他にもリプレス達が居て、その数20人。


「一つ7人計算か……」


 本気か冗談か判断付かないスクエはノラを無視して、どうするか考える。


──このまま見つかったら絶対に勝てない……ここはやり過ごすしかねぇ……


 ノラも同じ意見なのか二人はお互いの顔を見合って一度頷く。



「ウーヴェさん、本当に此処にいるのでしょうか?」


 作り笑顔でロメイがウーヴェに質問する。


「絶対居るだろうな、一ヶ月以上探し続けて何の情報も見つけられなかったんだ、後は此処くらいしか無い」


 ギロリとロメイを睨み付ける形で脅しを掛けるウーヴェ。


「は、はい!」


 ビビリまくるロメイは更には小さい体を縮み込ませる。


 そして、ウーヴェはそんなロメイから直ぐに視線を外し、部下達に指示を下す。


「お前達、なんとしてでも探し出せ──必ずこのスクラップ場の何処かにいる筈だ」

「「「「「はい!」」」」」


 ウーヴェの言葉に他の者全員が返事をする。


「よし──常に二人以上で行動を取れ、一人だと、いつかのグロックみたいにスクラップにされるぞ」


 ウーヴェはスクエ達に襲われてもフォロー出来る様にツーマンセル以上で部下達を組ませてスクエを探し出す様に指示する。


「見つけたら、直ぐに合図を送れ」


 ウーヴェの指示に頷くとリプレス達は一斉に走り散らばるのであった。


「さて、俺達も行くぞ」


 ロメイに言い、歩き出すウーヴェにロメイは質問する。


「な、なんで俺がウーヴェさんと組むんですか?」


 この緊張感から早く抜け出したいロメイは、あわよくば他の者と組ませてくれと願うが、それは無理な様だ。


「俺が一番強くて、お前が一番弱いからだ」


 ウーヴェの言葉に反論したいロメイであったが、事実だったので見えない位置で悔しがる。


 そんな様子を隠れながら観察していたスクエとノラは小声で話し始めた。


「なぁ……ノラ、これ、不味く無いか?」

「あぁ──見つかるのも時間の問題だろうな……」


 どうやらウーヴェの作戦は、先ず最初にスクラップ場の最果てまで部下達を行かせて、そして徐々に内側に移動して探索範囲を狭めて行く様子である。


「まるで狩られる側の動物の気分だぜ……」

「アイツら今回は見つかるまで帰らなそうだな……」


 二人で小声で話している内も着々と逃げる範囲を狭められ、魔の手がスクエに伸びようとしている。


「こうなったら、戦うしか……無いか……?」


 スクエの疑問にノラは答える。


「追い詰められて全員を相手にするよりかは二人ずつ相手した方が良さそうだな」

「分かった──まずはここから離れようぜ」


 こうして二人はロメイとウーヴェに背を向けて、他に倒す為の敵を静かに探し始めるのであった……

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