第29話 ウーヴェに目を付けられたスクエ
グロックを倒したスクエは疲労困憊の為、暫くその場を動けないでいた。
「それにしても良く倒せたな……」
側には機能が止まったグロックが有る。
「これで、終われば良いんだけど──そう上手くはいかねぇーよな……」
スクエは最後に逃げる様に走っていくロメイを思い出す。
「アイツがまた来るかもだからな……」
安心出来ない事は分かっているが、やはり今すぐ何かする気は起きなかったスクエはドラム缶の家に這いつくばる様に移動しながら戻った。
「流石に今日は──寝るぞ……」
そして家に着いたスクエは直ぐに寝息を立てて寝始める。
何時間経過したか分からないが、朝日が登り切った辺りでスクエは目を覚ます。
「うぅ……もう朝か……?」
まだ、眠いのか顔を擦りながら起き出したスクエ。
「身体のあちこちが痛い……」
グロックから何発か良いのを貰っていたスクエは痛む身体をさすりながら、今日の予定を考えていると、遠くで山の崩れる音が聞こえた。
「──もう来たのか?!」
山が崩れる音を聞いたスクエは一瞬で目が覚め、様子を見る為に昨日同様入り口に移動する。
「クソ、流石に昨日の今日で来るとは思わなかったぞ──罠も何も仕掛けてねぇ……」
スクエは風か何かで山が崩れたと信じたい様だが、入り口付近を確認すると何人かの人影を視認して──スクエの望みはアッサリと打ち砕かれる。
「ロメイと……アイツらは誰だ?」
物陰に隠れて様子を伺うスクエの目にはロメイの姿と何人かのリプレスが居た。
そのリプレス達は全員黒のスーツを着込んでいる。
「おいおい勘弁してくれよ……昨日より増えてんじゃねぇーかよ」
スクエが見える範囲ではロメイも合わせて六人程のリプレスが居る。
「それに、一人だけヤバそうな奴がいるな……」
スクエは一人だけ、サングラスを掛けている初老の爺さんを見て何かを感じ取った様だ。
そして、ロメイ達が何かを話している。
「ウーヴェさん、こ、ここです──この場所に奴隷が居ました」
「……」
ロメイからウーヴェと呼ばれた男は無言で辺りをぐるりと見回す。
「さ、流石に奴隷もここから逃げたと思います」
「……グロックはどこでやられた」
威厳のある口調でロメイに問い掛ける。
「こ、こっちだったと思います」
ロメイの案内にウーヴェとその部下達が歩を進める。
──あ、あんな人数で来られたら、いくら罠を仕掛けても倒しきれねぇーよ……
相当苦労して仕掛けた罠でさえ、グロック一人をスクラップに出来ただけである。
それが六人となれば、一体どれくらい時間を掛けて準備をしないとならないのか……
考えるのも嫌になったスクエはロメイ達にバレない様に自身も移動する。
そして、ロメイが右半身をローラーに潰されているグロックを見つける。
「ウーヴェさん、有りました──ここです!」
ロメイの指差す方に顔を向けるウーヴェ。
「……」
ウーヴェは機能停止したグロックを暫くの間無言で見た後に口を開く。
「くはは──リプレスを壊す人間か」
急に口角を上げて笑い出すウーヴェにロメイを始め、部下達まで驚く。
「よいよい、これは楽しみだ──何としてでも、その奴隷を探しだすぞ」
先程までグロックを見ていた顔は既に別の方に向いており、高揚した様子のウーヴェ。
「これは、高く売れる──それこそ値が付けられない程な!」
「ウーヴェさん、その人間を捕まえれば──」
「──あぁ、また一歩俺の望みが叶う」
組織同士の話なのかロメイは付いていけない為、黙っているとウーヴェがロメイに質問する。
「おい、その人間の特徴を教えろ」
有無を言わせない様な言い方でロメイに詰め寄るウーヴェ──ロメイはペラペラ話し始める。
「く、黒髪、黒目でした」
「ほぅ……ますます持って高値が付くな」
スクエの見た目などをウーヴェ達に説明するロメイを見てスクエは溜息を吐く。
──はぁ……これで更に俺を狙う奴が増えた訳か……
近くにスクエがいる事なんて梅雨知らずにロメイとウーヴェ達はスクエを探す為に街に戻るのであった。
そして、暫くその場で動かずにジッとしていたスクエは完全にロメイ達が居なくなった事を確認した。
「どうすれゃいいんだよ……てか、俺はどんだけピンチになるんだよ……」
スクエがこの世界に来て恐らく1か月くらいは経過しただろう──その間にスクエがピンチになった回数など片手で数えるのには足りないのでは無いだろうか?
「結局、今回も何とかしねぇーとな……」
ロメイやウーヴェ達に捕まったら、どんな仕打ちに合うか分からないスクエはこの状況を打破出来る方法が無いか考える。
「グロックと同じ罠で、あの人数全員をスクラップに出来る筈ねぇーよな」
もしかしたら一人二人くらいはグロックみたいにスクラップに出来るかもしれないが、二人スクラップにした所で他の四人に捕まって終わりであろう。
「かと言って、ここから離れても行く所がねぇーしな……」
スクラップ場を出ても余計にスクエと言う存在をリプレス達に見せるだけである。
「かと言って、ここに居ても、いずれまた戻って来るんだろうな……」
八方塞がりのスクエは頭を抱えながら、これからどうすれば考え始める……
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