第26話 リプレスとの戦い
──俺をアクアスの王に売るだと……?
スクエの疑問と同じ事をロメイがグロックに聞く。
「アバエフ様に、あの人間が売れるんですか?」
「あぁ──アバエフ様はロボット至上主義だからな、俺達リプレスの言う事を聞かない人間なんて見過ごせる筈がねぇ。きっと原因を調べる為に、かなりの金額を出してくれるだろうさ」
グロックが悪とい笑みを零す。
「な、成る程……い、幾らくらいで売れますかね?!」
「お前──それはもう……この国の王だぞ? そこらのマニアとは比べ物にならない程の額になるに決まっているだろ!」
二人は、既にスクエを売り飛ばした後の想像をしているのか、顔が綻んでいた。
「グロックさん──俺、やる気出てきました!」
「あぁ、何としてでも捕まえるぞ?」
「は、はい!」
「それに、あの人間さえ居れば俺は上にのし上がれるぜ……」
「上って、グロックさんが入っているグループのですか?」
「あぁ──俺はいずれグループの一番になりテェーんだよ──だが、あるジジィが居るからな……」
「ジジィ?」
「あぁ、クソウザってぇジジィがいるが、コイツが曲者でな頭が妙にキレて有能なんだよ」
どうやら、グロックは何処かの組織的な所に所属している様だ。
「上に行くには金が居る──だからあの人間が必要だ」
こうして、グロックとロメイはスクエが居る痕跡が無いか探し始める。
──やっぱり、アイツらはココでなんとかするしか無いな
スクエはバレない様に静かに二人から離れる。
「先ずは、罠の近くまでアイツらが来るのを待とう」
少し大回りして罠の所まで行き、スクエは罠の最終チェックを素早く済ませる。
「よし、後は……ここまで上手く誘き出せるかだな……」
スクエはあまり意味の無さそうな得物やら何やらを持ち、二人が現れるのを待った。
「焦るな──罠はしっかりと確認した」
目を瞑り、自身で考えた作戦を頭の中でシュミレーションする。
もう、何度も頭の中で反復した為今では確実にロメイとグロックを倒せる確信を持つ。
すると、暫くしてからグロックとロメイが近づいて来る気配を感じ取ったスクエは考えるのをやめた。
「来たか……」
一度深呼吸した後にスクエは敢えて二人が発見しやすい様にと道のど真ん中まで移動して地面に座り込む。
「さり気なくさり気なく──俺はただの日常を過ごしている……」
これからグロックとロメイを演技で誑かすのか、スクエはあたかも二人に気が付いていない様に振る舞う為地べたに座り込み何やらジャンク品を弄ったりしている演技を始めた。
そして、二人のリプレス達は曲がり角を曲がった先でスクエを発見した。
「グロックさん──いました!」
「あぁ、絶対逃すな!!」
スクエを見つけた二人は全力でスクエ目掛けて走り出す。
──食いついた!
一方、スクエの方も二人に発見された事を確認し慌てた様子を出しなが、直ぐに立ち上がり逃げ出す。
「待ちやがれ!」
グロックがスクエに叫ぶ様に声を上げる。
そして、グロックも馬鹿では無いのか直ぐに隣を走るロメイに指示を飛ばした。
「おい、お前は向こうから回れ」
「は、はい!」
──ッ!? 二人一緒に追い掛けて来るんじゃねぇーのかよ?!
スクエの読みでは二人一斉に追い掛けて来ると思っていた様だが、グロックが思いの外、頭が回る様で、直ぐにロメイを別ルートに向かわす。
──ど、どうする!?
スクエが悩んでいる間もグロックはどんどんと距離を詰めて来る。
──クソ、考えている暇なんてねぇ! 仮に一人残っても後で考える!
スクエは当初の作戦通り行動を始める。
「待ちやがれ!」
必死に逃げ続けるスクエは罠の所まで到着し立ち止まる。
その際も演技なのか、肩で息をしてグロックに走れないかの様なアピールをする。
「へへ、やっと立ち止まりやがったか──流石に体力の限界の様だな」
金髪で大柄なグロックに内心ビビリながら罠の所まで歩いて来るのを待つ。
──早く来い……
スクエは足元にあるロープをグロックに怪しまれない様にさり気なく手に持つ。
そして、緊張し過ぎているのかスクエの手は凄い汗ばんでいる。
「お前が何故人間三原則が効かないか知らねぇーが、取り敢えず俺に捕まれ」
既に、スクエを捕まえられると確信を持っているのかグロックはゆっくりとスクエに向かって歩いていく。
──そろそろだ……
「お前をアバエフ様に売り飛ばせば、確実に高値になる──そうしたら俺も組織の幹部になれるぜ!」
そして、グロックが罠の真下まで来たのを確認したスクエは……
──今だ!
先程、さり気なく拾い上げたロープを引っ張った。
すると、ロープの先に結ばれていたパーツがジャンク品の山の中からスポっと抜ける。
「よし! これで一人目は──」
スクエはグロックの真上からローラが落ちて来るのを待ったが、いつまで経っても落ちこてこない。
「な、なんでだよ?!」
慌てて、山を見るが──山の天辺はグラグラと揺れており、今にも崩れそうだが崩れない。
どうやら、スクエ的には完璧に計算してジェンガの要領で抜けば絶対倒れるであろうパーツを抜いたつもりらしいが、計算違いの様だったらしい。
──ど、どうする!?
まさかの想定外な展開に慌てるスクエ。
「ま、迷っている暇は無いよな! こ、こうなったらやるしかねぇ!」
リプレスを倒す為の罠が上手く発動しなかったスクエは逃げる事はせずに得物を持ってグロックの方に向かって走り出す。
「あはは──人間の癖して俺に向かって来るのか?」
グロックはスクエが罠を仕掛けていた事に気が付いていない。
スクエが破れかぶれに突っ込んで来ているのだと思っている様だ。
「クソクソ、なんでこんな所で失敗するんだよ!」
大声で叫びながら、スクエはグロックに向かって得物を振り上げて、力一杯振り下ろした……
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