第12話 スクエは異世界の文明に驚く!その2
「さぁ、食べてってくれ! ウチのご飯は旨いよ!」
屋台が無数に立ち並ぶ場所をスクエが歩いている。
「ここら辺だけ見ると日本見たいな感じだな──見た目は全員日本人には見えないけど」
ノラが待っている事もあり取り敢えず目に付いた屋台に近寄り買う事にした。
「いらっしゃい──何にする?」
「あぁ、ならそれを三つくれ」
「三つ!?」
スクエは串に刺さっている焼き鳥みたいな物を三つ頼むと凄い驚いた表情をされた。
──ん? なんかおかしい事言ったか?
不思議そうにしているスクエに店の人間が怪訝そうな目で話す。
「アンタ、お金あるのかい?」
「金? ──これだよな?」
朝にノラから放り投げられて貰ったものを店員に見せる。
「す、すげぇ……──三つだな今用意するから待っててくれ」
金の入った袋の口を開けて店員に見せると、とても驚いた表情をする。
そして店員は直ぐに接客モードに切り替えたのか素早く三本用意してスクエに渡す。
「ヘイ、お待ち」
「ありがとう」
「またのお越しを~」
大きな声で見送られたスクエは直ぐにノラの元に戻る。
「ん? どうかしたか?」
「いや、コレを三本買ったら店員にとても驚かれたんだが……」
「あぁ……成る程」
「どう言う事だ?」
スクエは先程買ったばかりの物を口に頬張りながら質問する。
「この世界での人間達の生活水準がどれくらいか想像つくか?」
「うーん、まぁ朝から晩までリプレス達に働かされているとしたら、ご飯に困らない位には稼げるだろ?」
スクエの問いにノラは何度か左右に首を振る。
「主人にも寄るが酷いものだとご飯などは一日一回しか与えられ無いらしい」
「嘘だろ……」
「本当だ。朝から晩まで働いてその程度だ──しかもそれが特別悪いわけじゃ無く殆どの奴隷は似たり寄ったりの待遇を受けている」
ノラの言葉にショックを受けるスクエ。
「まぁ、スクエは私に買われてラッキーだ。私はそんな制限などせず金も好きだけ使っても良いしご飯も三回食べても良いからな」
「な、なら。店員が驚いてた理由って……」
「そうだ。そんな待遇の奴隷が朝ご飯に三本も買ったとなれば、それは驚かれるのもしょうがないな──まぁ複数の奴隷を所持している者も居るから一概には言えないが」
それから二人は更に足を進めて国のあちこちを歩く。
「ノ、ノラ! あれなんだ?!」
暫く歩くとスクエはある建物に目が行く。
「ん? ──あれは城だな」
「城?」
「あの城に王である、アバエフ様がいらっしゃる」
──王様か……
スクエとノラが見ている城はこの国の中で一際大きい建物であり中心地にあった。
周りは高層ビルなどが無数に立ち並んでいると言うのに中心に城がある事が少しアンバランスに見えるが、そんな事が気にならない程の大きい城であった。
「ここの王はどんな奴なんだ?」
「ふむ。まぁ一言で言えば良い王だな」
スクエは少し驚く。こういう異世界に飛ばされた先の王などは、どうせロクな奴では無いと相場が決まっていると思っていた様だ。
「だが、良い王とは我々リプレスに対してだがな……」
「どういう事だ?」
「アバエフ様は我々リプレスにはとてもお優しい方だが、人間に対しては家畜同然に扱う……鉱山にノーブルメタルを発掘する様に命令したのもアバエフ様だ」
──成る程。やはり俺から見たら、どうやら良い王では無さそうだ。
その後もノラに色々案内されて最後に到着した場所は何やら広大な場所であり、金属などが山になって積み上げられている場所であった。
「ここは?」
「スクラップ場だ──我々リプレスに寿命などは無いが、やはり他の国との戦争や不運な事故や修復出来ない様な不具合が起きたリプレスが最後に来る場所だな」
スクエは周りを見渡すが誰一人居ない。
「これで一通り説明が終わりだ」
「あぁ、あまりにも色々な施設などがあって覚えきれねぇな」
「ふふ、まぁこれから慣れて行けばいいさ」
スクエとノラは帰り際に再度屋台に寄ってスクエの夜ご飯を調達してから家に帰った。
──今日色々な場所をノラに案内して貰ったがこの世界の技術は俺が居た世界より遥かに上だな……
どこの施設に行っても色々な形をしたイナメントが完璧に対応していた。
──確かに、これじゃ人間よりイナメントが重宝されるし優先順位が上なのも納得が出来る。そして、人間に対してのあの仕打ちも……
ノラとの案内の間、何体ものリプレスとすれ違ったスクエだったが、中には奴隷を連れて歩いているものたちが居た。
そんなリプレスの奴隷達は何かにつけて主人達に暴力や罵詈雑言を浴びさせられたり、又は笑い者にされたりと酷い扱いを受けているのをスクエは見ていた。
──こんな事許されるのか……? いや許して良いのかよ……
どうやらスクエの心の中では色々な事が渦を巻いている様だが、まだその渦についてどうすれば良いか思い付かない様だ──いや、考えたく無いと言っても良いのかもしれない……
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