再会

勝利だギューちゃん

第1話

仕事で、少し遠くの銀行へ行ってきた。

この銀行のある町は、僕が小学生の頃まで住んでいた。


今住んでいる町と同じ市内なので、たまには来ていた。


この町には、高台にお地蔵さんがある。

でも、そこには行っていなかった。


「せっかく来たんだ。久しぶりに行ってみるか」


そう想い、お地蔵さんに会いに行った。


迷うと思ったが、すぐ着けた。


階段を上がる。

子供の頃は平気だったが、今は、少しつらい。


子供の頃は、地元の子供会に入っていて、ここでお菓子を配られていた。

僕の家は、スナック菓子は買ってもらえなかったので、食べられるのはこの時だけだった。


当時は、親を恨んだが、今思えば、当然と思う。


そして、久しぶりにお地蔵さんと対面した。

気のせいか、小さく・・・そして、狭くなった気がする。


「お久しぶりです。お地蔵さん」

誰もいないのを確認して、声をかけた。


正面に本体があり、脇に小さいのが並んでいる。


『元気じゃったか』

「覚えていてくれたんですね」

『当たり前じゃ。みんな覚えておる』


会話をかわす。


「ところで・・・」

『どうした?』

「あなたが本体なら、脇にいるのは、オプションですうね」

『バチ当てるゾ。脇のは子供らじゃ。教わらんかったか?』


知っている。

言ってみたかった。


期待通りの突っ込みありがとう。


「ところで、お地蔵さん」

『どうした?』

「背、縮みました?」

『お主が大きくなったんじゃ。おっさんになりおって』


悪かったな。


『結婚したか?可愛い嫁さんか?子供は何人いる?』

「知ってて訊いてないですか?」

『ああ」


即答ですか・・・


しばらく会話を楽しんだ。


「じゃあ、また来るよ」

『おお。いつでも歓迎するが・・・』

「するが?」

『今度は、お供え物もってこい』

「断る」


もちろん冗談だ。


今の騒動が収まったら、ゆっくり話にこよう。


旧友との再会?

いや・・・

もう引っ越しをして、どこかにいるだろう。


会ってもお互いにわからない。


それでいい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

再会 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る