第3話 授業中

      【藤代くん視点】

 ただいま授業中。


 うわっ、この問題難しすぎ……。全然分からないんだけど。


 「苦戦してるの?」

 「ま、まぁ……」

 「教えてあげようか?」

 「えっ、いいの?」

 「もちろんよ」


 白井さんって頭いいのか?

 なんか上機嫌だし。


 「……ここはこうしてこうね」


 お、お? すげー! 分からなかった問題がこんなにあっという間に。ん?


 「この程度の問題が分からないなんてただの馬鹿ね」

 「……ここ二じゃなくて三だと思うけど」

 「ちょ、ちょっと間違えただけよ!」


 うわー、恥ずかし。


 この程度の問題も分からないなんてただの馬鹿ねって思いっきりブーメランじゃん。

 ブーメラン自分に刺さっちゃてんじゃん。


 でも、それ以外は完璧だし白井さん頭いいのかもな。


 「教えてくれてありがとう」

 「な、何よ! 別にたいしたことは教えてないでしょ!」


 やっぱよく見ると可愛いんだよな。


 「……何よ?」


 あ、やべ! うっかり見つめてしまった。


 「……何でもないです」



      【白井さん視点】

 ただいま授業中。


 藤代くんがすごい勉強に苦戦してる。

 ここは私が勉強を教えてあげなければ!

 そして『白井さんって頭いいんだね。良かったら僕と付き合ってよ』みたいな展開になるかも!

 えへへ、えへー。


 「苦戦してるの?」

 「ま、まぁ……」

 「教えてあげようか?」

 「えっ、いいの?」

 「もちろんよ」


 喜んでる! あの藤代くんが喜んでる!

 ここはカッコ悪いところなんて見せられないわ!


 「……ここはこうしてこうね」


 どう? 藤代くん。 私って意外に勉強出来るのよ! こんな私とならずっと一緒にいたいでしょ!


 「この程度の問題が分からないなんてただの馬鹿ね」


 でも恥ずかしくてそんなこと言えないー!

 どうして私は素直になれないのー!?

 

 「……ここ二じゃなくて三だと思うけど」


 え、私が間違えた?

 

 「ちょ、ちょっと間違えただけよ!」


 

 藤代くんにカッコ悪いところを見せてしまったー!

 ……嫌われたかも。


 「教えてくれてありがとう」


 えー!? 私、間違えたのよ?

 それなのに感謝の言葉を言われるなんて!

 何て藤代くんは優しい人なの!


 「な、何よ! 別にたいしたことは教えてないでしょ!」


 だから何でこう言うところで素直になれないのー!

 ん? 藤代くんが私を見つめている!?

 もしかして、これがきっかけで私に惚れたの!?

 いやいや、そんなわけないじゃない!

 でも、もし私に惚れたなら嬉しすぎー!!


 「……何よ?」


 冷たくしてごめんねー!

 でもこれは私の精一杯の照れ隠しなのよ!


 「……何でもないです」


 ……何だ特に意味はなかったのか。

 残念だわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る