第6回 言語とイメージについて
イメージを膨らませましょう。頭を柔らかくして、自由な発想でエネルギーを放出しましょう。
私はこういうなんとも抽象的な指示が苦手でした。小学生の頃に受けた図工の時間では皆がみな好きなように木材や粘土をいじるなか、私は何を作ればいいのかという指標のようなものが欲しくて結局パッケージに描かれていたロボットを作っていました。自由とか、イメージを、とかそういう言葉自体が明確な形を持っているわけでもないのでこういう言葉に翻弄されてしまう気持ちもわかる気がします。
そんな訳で今回は言語によって生まれたイメージについて(妄想を)掘り下げていきたいと思います。イメージとは何か。それによってどんな利点が生まれ、私たちは何を見損なっているのか、考えてみましょう。
これまでのお話のなかでも度々このイメージという言葉は使わせていただきましたが、まずイメージとは何か。それは名称を与えられた概念ではないかと思います。
イメージという言葉には名詞と動詞が存在し、それぞれ「偶像、映像、想像」「描く、想像する、映し出す」という意味があります。このことから想像を視覚的な映像に変換すると考えた私の理論は、あながち間違いではなかったことが分かります。
では、人がイメージ(想像)するのはどんなものなのか。
まず一つは、言葉の通り「映像に変換する」ことでしょう。これは動詞としてのイメージですので、聞いた話からその様子を頭の中で映像として想像することを意味します。物語のなかだと主人公が不釣り合いな者同士の掛け合いを想像して笑みをこぼす、なんてシーンで見かけますね。実際にそのような状況になくても言語情報だけでその状況を映像として見ることができるのは人間の強みでしょう。(そのことについては前回の信仰のお話の中で少し語っております。)
そしてもう一つは、実態を持たない抽象的な概念を捉える時に使います。これは、名詞の「偶像」という印象が強いでしょうか。
例えば、天国や地獄、幽霊やポルターガイストのような怪奇現象などがあげられると思います。
天国や地獄というのは皆さん一度は信じたものではないでしょうか。今も信じている方もいるかもしれませんが、私はそこまで信じてはいないのでここではあくまで存在するかしないか分からない「概念」として扱います。不快に思われたらすいません。
天国や地獄という死後の世界というのは様々な語られ方をしますが、その実態を解き明かせる人などいるのでしょうか?死後の世界を確立するというSF小説や死後の世界と繋がってしまったというホラー映画などは知っていますが、そのどれもがフィクションでありそこで描かれる死後の世界というのも全ての概念でしかありません。では、どうして私たちはそんな解明も確認もされていない実態のない概念についてこうも語れるのか。それは名称を与えることによって概念に仮の実態を与えることができるからだと思います。
天国も地獄も、幽霊のような存在も全ての人間のイメージです。イメージがあるから人はそれについて想像を膨らませ、感情を湧き立たせ、あーだこーだと語り合うことができます。しかし、不思議です。私たちにとってそれらはただのイメージであって実在すると証明されているわけではないんです。天国は本当に素晴らしい場所なのかも幽霊が本当に人にとりつくのかもわからないのに語れるのはなぜなのか。
それはイメージによってそういうものと納得した気になっているからでしょう。これはなにも実在しないものだけに限った話ではないでしょう。私が今目の前で使用しているパソコンだって、その原理をすべて理解しているわけではありません。それでもこうして何の疑問も抱かずに使えているのは、私がそれを「機械」というイメージで括って理解した気になっているからです。
人間はたくさんの知識を生み出してきましたが、一人の人間が生きていく中でそれらすべての知識を有し理解するのはあまりに難しいですし、する必要もないでしょう。なんたってある程度は操作できるように簡略化されているのですから。理解する必要があったとしてもそれは専門知識として部分的に理解するだけで構わないのです。
では、分からないままでも生活に支障はないかといわれるとどうでしょうか?人は理解できないものを否定し拒むと聞いたことがあります。なら今目の前にあるパソコンもテレビもスマホだって(仕組みを)理解できないものといっても過言ではありません。なのに私は平然と使用している。それは機械という概念で中身のない仮の姿に収めることで、認知はできても理解するには至らない幽霊のようなものとして見ることができているからでしょう。
(うーん、訳が分からなくなってきました。もういっか・・・)
イメージとはある意味、そういうものと思い込むための形なのかもしれません。それは存在しないものを存在するものとするため、理解できないものを理解していると思うため、イメージをするのかもしれません。
私たちが本当に理解しているものはどれほどあるのでしょうか。理解していると思っていることももしかしたらイメージだけなのかもしれません。
はい。もうやめにします。
お疲れ様でした。
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