第1章 地獄

第1章 地獄

「奴らが来たぞー、女子供は早く逃げろ!」

「ここは俺たちで時間を稼ぐ!」

この声は聞き慣れた声だ、村長の息子のおっさんで、俺の3つ下のジュリアという娘がいる。

「パパ、絶対帰って・・・来てよ。」

ジュリアがそう言うと。

「ああ、必ず約束するよジュリア、パパが約束を破ったことがあるか?」

とおっさんは笑いながらジュリアに話した。

「あるよいっぱい!だからこ、今回はちゃんと約束守ってよ」

と泣きながら話すジュリアにおっさんは言った。

「約束するよ、必ず。だからとりあえずママと逃げなさい。」

ジュリアも分かっているのだろう、恐らくもう生きた父には会えないと・・・それでも

「分かった!じゃあ帰ってきたらいっぱいいっぱいジュリアがパパの言うこと聞く!」

おっさんは涙をこらえながら

「よーーしいい子だ、マリー、ジュリアを頼む」

「分かったはアナタ、どうか無事で」

会話が終わったところでおっさんが言った。

「いいかーーー、女は子供を連れて早く行けーーー、野郎どもは今日こそあいつらに目に物見せてやるぞーーー。」

「ほら、あんたも早く行くよ」

母が俺に言いながら、手をつないで走り出す。

15分ぐらい走ったところに緊急用の地下があり、そこに着いて身を隠す。

みんな震えが止まらない、泣きそうな奴も多いが居場所がバレないように必死に、俺も。

地下にこもってから10分ぐらいが過ぎただろうか、緊張の疲れで眠気が出てきてうとうとしてしまった。

その時だった。

「鬼っさんこちら~手っのなっる方へ~~」

「タイチョーウ、それ追っかけられる方が言うセリフっすよ」

「あっれーそうだっけ?それじゃあ俺らは鬼ってことか?」

「いや、悪魔っすよ」

「そうだよな俺達は悪魔だ、あんな生易しいもんじゃねえよな、わりぃな」

「そうっすね悪魔は悪魔らしく残酷に非道により惨めにさせてやらねえと殺られる奴に申し訳ねえっすよ」

「そうだな!違得ぇねぇ!!」

奴らが近くで談笑しているのが聞こえた瞬間、俺もみんなも一気に緊張が高まった。

バれる、殺される、いやでもここは入念にカモフラージュしてあ

「あっれれ~、おっかっしいぞ~、この辺の下に人間の匂いがするぞ~」

「分かるんすかタイチョウ?」

「俺ぐらいアレと遊んでると分かんだよねぇ~、あっちの20mぐらいの下探ってみ、玩具がたくさん集まってるからぁ~」

「いましたータイチョーー、良い玩具ばっかですよーー」

見つかった、殺されるだけならまだマシだ・・・・これから起こるのは惨劇だ。苦しまされて、弄られて、玩具として使われる。

こいつらは定期的にこういうことをする。

その気になれば人間を全滅させるのに3日とかからないだろう。でも、こいつらはそれをしない。定期的に遊んで楽しんでいる。

「ほらほら皆さんはよ出なさい、うちのタイチョウ待たっせっとチョー怖いよーー」

そして全員が外に出された。全身が震える、今までにないぐらいの恐怖と絶望、それもそうか、まだ十一年しか生きてないのだから。

「おーーーい、お前らアレ全部持って来たよな?」

その隊長の言葉に反応して部下たちが大きな袋を持って来た。

「はーーーーい!それじゃあお披露目多タァァァァイム、感動の再開でちゅね、しくしく」

部下たちが袋から乱雑に「ソレ」を地面に捨て始めた瞬間、みんなが絶叫した。

「お父さーーーーーーーーん」

「あなたーーーーーーーー」

「パパーーーーーーーーー」

と、皆が悲鳴を上げている。地面に転がった無数の男達の頭部を見て。

「わーーーーお感動の再かぁぁぁい、悲しいね、寂しいね、でも会えてよかったねぇぇぇ!最後に会わせてあげるなんて僕ちんマジやっさっしーーーなぁお前らもそう思うよな?」

部下たちはいっせいに爆笑し始めた。

「いっやーー隊長、笑い堪える過ぎて死にそうでしたよーー。」

「え?そうなの僕チン良いことしたのにーーー?それで笑わせられるなら僕チン笑いのせんすあるかもぉ~」

「そうっすね、隊長は笑いの天才ですね」

「コラコラ、おだてても何も出ないぞ!。っと言う訳で第二フェスティバルの会さーーーい」

「おい、ちょっとそこの親子前に出ろ」

指名されたのは同級生の女の子と母親だった。

だが、足がすくんでいるのか腰が抜けているのか全く動けずにいた。

すると、

「おっっっっっっせえええええええんだよーーービチクソどもがああああああ」

と、一瞬で母子ともにバラバラにされた。

「俺様はなぁぁ、この世で一番待たされるのがキライなんだよォォォ!」

と悪魔の隊長が言った。

「やっべ、タイチョー切れちゃった。こりゃあ簡単には逝かせて貰えないなぁ」

「ほらほら分かったっしょ?うちのタイチョウ怒らせっと怖いよって?」

「タイチョー次どれにしますーーー?」

「んじゃ、一番前の・・・・・・っと思わせといて、その後ろの親子」

その親子はすんなり前に出た、仲の良い母親と5歳下の男の子。

「それじゃあ、フェスティバルの内容を発表しまーーーす」

そこへ一本のナイフが渡された。

「それじゃあ、このナイフ母親が持て、そして息子を殺せそうすれば、テメェの命だけは助けてやる」

一瞬時が止まった。そんなこと出来る訳ない。どうする?二人ともまた殺されるのか?

「はーやーくー!僕チン待たされるのキライって言ったよねぇぇぇ?ほら3・2・1」

その時、その母親が大きくナイフを振りかぶり、自分の心臓に突き刺した。

そうか、自分は死ねば子供は助かる。だから、っと思った次の瞬間。

「ぐあああああああああああああああああああああああいたうわーーーー」

さっき呼ばれた男の子の四肢が切断され目がえぐり取られてる。

「素敵な家族愛でした0点、母親の愛情って罪だよね自分はさっさと死んで息子にこんな苦痛を強いる。」

と『隊長』が言い放った。

絶望・・・ただただ絶望しかなかった。

「あら息子ちゃん死んじゃった?んじゃ次はシンプルに一番前のお前ら」

「ごめんね」

「いいよ、私も苦しみたくないから」

母親は娘をナイフで刺し、自らもナイフで突き刺し死んだ。

「なんか、つまんないなぁぁぁぁ、あっ、良い案思いついたーーーー」

「そこの二親子前に出ろ」

二親子は言われるがままに前に出た。

「フェスティバル第二だぁぁぁぁぁぁん、そっちの親と子供交代。」

そして、ナイフを渡される。

「それではーーーー、ルーーーーールを説明しまぁす」

「今いる他人の子供を殺せば、お前も、お前の子供も、そしてその娘の母親も助かりまぁぁぁぁぁす、でも自分が死んだりしたらみんな苦痛に悶えて死にまぁぁぁぁす」

「それではドーーーーーーーーーン」

「ハイ三!」

「やめてーーー私の大切な一人娘なのーーーーーーー」

「ハイ二!」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

「ハイ一!」

そしてその母親は他人の子供を突き刺した。

「ブッッッッッッラボーーーーーーーー、そうそうコレコレ、結局人間も自分たちさえ良ければ何でもやっちゃう、それが生き物の証、誰かの犠牲無しでは生きられないんだよ」


此処は地獄だ・・・

人間に生きる道はない、ここは悪魔が支配する世界。

人間は家畜、玩具、奴隷・・・誰も逆らえない。


『逆らえない?誰が決めた?悪魔が支配している?ならお前たちが悪魔を虐げる側に回っても問題なかろう?抗え。そのための力を私が貸そうじゃないか。』


聞いたことのない声、でも分かる、俺はこれからこいつ等を蹂躙し弄ぶ。そのために力が貸される。


その時、世界に9つの光が舞い降りた。


悪魔の一人が

「なんだこの光は?」

「気にしなああああああい、さぁフェスティバルのつ」

俺は『隊長』の腹をえぐり、四肢を一瞬で切断した。

「なあ隊長さん、あんた『誰かの犠牲なしじゃ生きられない、それが生き物の証』って言ったよな?」

「なんだおま、、ぐえええ、おえええええ」

今までにないくらいの高揚感が俺を襲う。俺はこれから狩られる側ではなく狩る側に回る。

『楽しい』、『嬉しい』、それ以上に『憎い』『汚い』『哀れ』様々な感情が入り乱れる。

「喜べお前らがその犠牲の第一号だ」

と言うと涙が自然と流れた・・・・そうか俺はこれから『こいつら』と同じことをする。

そのまま、そこにいる悪魔15体を瞬殺した。

結局『人間』も『悪魔』も変わらない、力があるかないか、それだけ。





このときの涙は悲しみと絶望の涙なのだと『今』になって気づいた。

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