海霊

渋柿屋

プロローグ 海声

まだ小さい頃、海が私に言った。海は私を呼んでいる。それは、きっとずっと前から。もしかしたら、私が生まれる以前から、私は呼ばれていたのかも知れない。でも、最近は聞こえない。もう海は私に語りかけては来ない。

それでも感じる。恐らく、これで終わりじゃない。まだきっと始まってすらいなかったんだ。

今年は例年よりはやい六月半ばには海が海水浴客で溢れていた。本格的に夏が始まった。


海が唸りを上げたのは、それから間もない頃だった。

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