一日一廻!!~1日1度のスキルガチャ!SSレアスキルでイージーモードを目指します~
佐伯凪
第1章
第1話 衣・食・住・ガチャ
「うぃー! バイト終わりぃ! そして今日は給料日ぃ!」
俺こと
時刻は午前6時。
「お? 今日も美幸の百連ガチャが見られるのか?」
バイト仲間の
プライバシー侵害だが、俺と修司は同じエロ漫画でヌいた仲だ。気にすることもない。
「おうよ! この為に、この為だけにバイトしてるようなもんだからな!」
深夜バイトを沢山いれて、月六万の収入。
1回三千円の十連ガチャを二十回、つまり二百連ガチャを行うことが可能な金額だ。
だけど生活費があるので頭の良く
たったの半分の三万円しか使わないのだ。なんて偉いのだろう。
世が世ならノーベル節約賞を受賞しててもおかしくない。
早速スマホでソーシャルゲームを開く。
そこは剣と魔法とスキルの世界。
さぁ、君も自由な世界に飛び立とう!! なんてログイン画面の説明文を高速タップで飛ばす。
自由な世界とかどうでもいいです。
俺はガチャを引きたいだけなんです。
レアを引いたときの快感を得たいだけなんです。
「今日はSSレアがたくさん出るといいね」
もう1人のバイト仲間の
この子は家が貧乏で
そして可愛い。
地球がソシャゲの中の世界だったら確実にSSレア
「この前はSSレア一枚も出なかったよな。あれは笑ったなぁ」
修司はちょうど一か月前の百連ガチャを思い出し、笑いをしながら
やめて、思い出し泣きしちゃう。
「見てろよ! まず
俺は『10000
「そういえばお前、
その言葉に手を止めた。パチスロ?
「パチスロなんて何のためにするんだよ。ガチャが引けるわけでもないし、どうせ負けるんだろ?」
「まぁ、負けることもあるし勝つこともあるな」
「だったら素直にガチャ回した方がいいじゃないか」
「でもさ、たまに三十万とか勝つやついるぞ?」
「さん……じゅう……まん?」
なんだ、それは。
肉まんの
「そのくらいあったら、千連ガチャできるな」
「せん……れん……?」
センレン? 洗練? ……千連!?
「おおおお、お前! それ、千連って、十が百個の千か!? お前、千か!?」
「それ以外に何があるんだよ」
「まじかー……まじかー……」
千連かぁ。そんなにガチャしたら、どうなっちゃうの? 千連ガチャしたら、ガチャが千回回せちゃうの?
そんなに回したら、どうなっちゃうの!?
「な、なぁ……パチスロって、どうやるんだ……?」
「お? 一緒にいく?」
「ちょっと、ちょっとだけ興味ある」
「よし、じゃあ勝っても自慢しない、負けても
「約束する!」
「九時開店だからどっかでカツ丼食ってから行くか」
「カツ丼くってかつどーん!」
「ねぇ……ほどほどにしておいた方がいいと思うよ?」
菜々実が困ったような笑顔で忠告してくるが、千連ガチャの前には忠告など耳を通りすぎて行く。
「大丈夫大丈夫! ちょっとだけだから!」
「本当に大丈夫? 目が怖いよ?」
「先っちょだけ! 先っちょだけだけら! やばかったらすぐ辞めるから!」
「もう、知らないからね」
菜々実に見送られて、俺は人生初、パチスロへと向かった。
「おい……そろそろ止めた方がいいんじゃね?」
「ラスト! ラスト一万!」
「それで六万円目だろ? 生活費どうすんだよ……」
「勝つから! 当たるから!」
震える手でお金を入れる。
もう返しませんとばかりに強い力で俺の諭吉が吸い込まれていく。
その代わりにコインがじゃらじゃらと流れ出る。
「はぁ。俺は先に帰るぞ。結構稼がせてもらったしな」
修司は店員を呼び出すと、大量のコインを持って去っていく。
あれで八万円くらいになるらしい。
なんか良くわからないが、いきなり画面が真っ暗になって、それからコインがたくさん出てきていた。
俺も! 俺も修司と同じことをすれば!
今までにSSレアを何度も引いてきた俺に引けないはずがないだろ!
……
…………
………………
あれ? なんだこれ?
ぼくは、手の中の1個のあめだまを眺めて、首をひねる。
財布を開く。まるで秋空の様にカラッとしている。
あれ? ぼくは、数時間前まで、六万円持ってたよね?
んー?
六万円あったのに、今はあめだま一個しかない。
あ、もしかして、このあめだま、あめだまと見せかけて、ダイヤモンドなのかな?
包み紙を開くと、透明な丸いあめだまのようなものが出てきた。
ダイヤモンドの原石ってまぁるいのかなー?
ぽいっと口にいれてみる。
大発見! ダイヤモンドは甘かった! わー! すごい発見だ!
涙がツーっと流れる。
そう、これは罰なんだ。
せっかく女神様に忠告を貰ったのに無視してしまった愚かな俺への。
ボーッと突っ立てる俺の背中に、ドンッとだれかがぶつかった。
「あ、すみませ……」
背中が熱い。
「お前! 見てたぞ! あんなに勝ちやがって! だから俺が負けたんだ! お前のせいで!」
はて? 俺は六万負けましたが?
あー、なるほど、八万買った修司と勘違いしたのか。
隣に座って喋りながらやってたからなー。
「はは、それは……俺じゃない……ですよ」
足から力が抜けて倒れる。
背中が熱い。
「これは、この金は俺のもんだ!」
そいつは俺の財布を奪って走って行った。
あのー。その財布には全然お金入ってませんよー。
そう言おうとするが、声が出ない。
背中が熱い。
まぁ、うん。分かってるんだけど。
刺されてるみたいだ。
あーでも、痛いって言うより、熱いって感じなのかー。
ワイワイガヤガヤと俺の回りに人が集まってくる。
あのー、スマホで写メとってないで救急車とか呼んで欲しいんですけども。
SNSに写真を上げたりはしないでくださいねー。お母さんが悲しむのでー。
だんだんと薄れていく意識。
最後に見えたのはフラッシュの光だった。
「……さん。神宮美幸さん」
俺に呼び掛ける優しげな女性の声。
覚醒した意識が心地いい声でまた眠りへと誘われていく。
「神宮美幸さん。美幸さんってば。もう」
どうやら一命をとりとめたらしい。
看護婦さん。俺ちょっと眠いの。もう少し寝かせて。
「美幸さーん。せっかく珍しい魂なのに。仕方ないです。輪廻転生の輪に従い、魂を浄化してしまいましょう。今は桜の需要が高まってますから、おそらく桜の木に転生できるでしょう」
桜の木かぁ。いいかもしれないなぁ。
綺麗な薄ピンクの花を沢山咲かせて、人々の心を和ませよう。
「
「ちょっとまったぁ!」
思わず勢い良く起き上がる。
「っつ! 背中が……痛く……ない?」
「あ、おはようございます。神宮美幸さん」
なんだか白くてふわふわした空間が目の前に広がる。
そして俺の目の前にはなんかこう、女神様のような人が、女神様のような服を着て立っている。ていうかこれ女神様だ。
少しタレ気味の優しそうな瞳。控えめなお鼻。優しげな口。綺麗な白い肌とウェーブのかかった髪。
そして全ての迷える子羊を受け止める柔らかそうな
「おっぱい」
「え?」
「あ、なんでもないです」
「そ、そうですか」
女神様はさりげない動作で胸を隠した。
『男性はバレてないと思ってるかもしれないけど、バレバレだからね。おっぱい見てるの』
って菜々実がいってたけど、本当なのかもしれない。
「美幸さん。落ち着いて聞いてください。貴方は強盗に刺されて、命を落としました」
「……はい?」
「刺されたところが不味かったようです。大変お気の毒ですが……」
んー。
俺、死んじゃったの? 普通に意識あるんだけど。でも神様いるしなあ。
「本来肉体を失った魂は、
「えっと、はい」
「しかし
「……はい」
「貴方は今までに見たことのない、非常に珍しい想いを魂に刻まれていました。えっと、ガチャ? という思いです。長い間、沢山の魂を導いてきましたが、ガチャという思いは初めてです。あなたのように強い想いを刻んだ人を求める世界があるのですが、その強い想いを持って異世界に羽ばたきませんか?」
なるほど。分からん。
「あの、ちょっとお尋ねして良いでしょうか」
「はい、構いませんよ」
「僕の魂に刻まれたガチャへの思いで、いったい何が出来るんですか?」
「それは……わかりません。本当に初めての事なので。ただ、1日に1度だけガチャというものが出来るようです」
「うーん、そうですか……」
そりゃそうか。ガチャなんて
「もちろん、輪廻転生の
なるほど、それもいいなぁ。
「虫として踏み潰されるか、細菌として消毒されるか、どんな生になるかは分かりませんが」
「異世界に羽ばたきます」
「そちらでよろしいですか?」
当たり前だ。そんなの生き物の総数から考えて虫とか細菌に生まれ変わる方が可能性高すぎるだろ。
「それでは神宮美幸さん。新たな世界で、貴方の強い思いを忘れることなく、強く生きてくださいね」
女神様は手を掲げると、まばゆく光る魔方陣が現れる。
「貴方の生に、幸多からんことを!」
魔方陣に導かれる様に俺の体が薄れていく。異世界とやらに行くのだろう。
最後に女神様のおっぱいを眺めようと目を向ける。
「ちぇっ」
しっかり両腕でガードされてました。
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