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第1話

今年で33歳になる。

今も昔もYouTubeは好きで毎日観てる。

でも10年くらい前から観ているにもかかわらず、登録しているチャンネルは常に3つくらいしかない。おまけに何らかんらで、ずっと解除せずお知らせ設定をして、新作が出れば十中八九観ているチャンネルは、1つしかなかった。

そのチャンネルはお世話にも登録者が多いとは言いがたい。むしろこう言っちゃ何だが10年くらい前から投稿しているわりには、登録者数は少ないほうだろう。

動画の内容もゲーム実況をやりながら他愛もない雑談をするもので取り立ててきをてらうようなものでもない。でも、その人の動画にコメントしたいが為に俺はチャンネルを作った。

周りの人間には唯一1人を除いて、この事は一切言っていない。そもそもYouTube自体昔から好きで、ずっと見ているなんて知らないし、恥ずかしいから言わないとかではなく、わざわざ言う必要もないのだ。自分が好きだから観る。それだけで十分。

因みにその知ってる人とは、歳が3つ離れた兄が一人居てそいつである。今でも覚えてればだけど、俺がYouTubeが好きで、このチャンネルが好きな事当時はよく話したっけ。

何で過去形かと言うと兄は7年前いつも通り仕事に行ったっきり帰って来なかった。

兄の机の上には置き手紙があって、「俺の事を想うなら頼むから探さないで欲しい。頼む。頼む。」とだけ書いてあった。最後の頼むという文字は強く書きすぎて紙に穴が開いていた。よっぽど探して欲しくないんだと、母と話し合って捜索願いも出さず現在に至っている。

親戚の何人からかは探さないなんて薄情だと言われたが、もう兄もその時29にもなるいい歳こいた大人だったし、出ていきたいという必死さをひしひしと感じた母と俺は、きっと探せば兄は死んでしまうと確信していた。だから、何処かで生きているならそれで良い。そうやって割りきった。

その兄も今年で36歳。

元気にしてるかい?兄貴。

俺は、3年くらい前から独り暮らしをしてる。会社は当時と同じところに勤めてて、7年前当時付き合ってた彼女と別れた後は彼女はいない。変わった事と言えば少し出世して平社員から課長になったよ。

何処かで生きてるよな。きっと。

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