第432話 発言=本心?

 大学は学問をするところなので、学問をしている最中には、学問的な視点で物事を観察し、考えを述べなければならないのだが、それを、個人のキャラクターとして見ている学生が、少なからずいるように思える。


 仕事の場で、良い知らせを持ってくる人は良い人だと思われ、悪い知らせを持ってくる人は悪い人だと思われる、という実験結果があるらしい。これは、その人が状況に応じて述べていることが、その人自身の本心だと思われる、ということを意味している。人間は直感的に相手を見ていて、意識的に目を向けない限り、その裏にある状況には注目できないということである。


 学問とは、つまり科学だから、相手の言っていることが正しいか、正しくないかを、論理的に判断しなくてはならない。だから、否定する場面が少なからずある。けれど、それはその場での意見を否定しているのであって、発言者自体を否定しているのではない。そこを勘違いすると、人間関係は間違いなくぎすぎすしたものになる。


 日本人は、職場での関係を、私的な人間関係にも持ち込む、と言われる。職場を出たら、上司と部下の関係はなし、というふうには割り切れないようである。

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