第387話 理屈はなくならない

 「理屈なんて必要ない。あなたのしたいようにすれば良い」というのは、理屈である。


 上記のようなことを言う人は、何も考えないで言っているのではない。どうしてそう考えるのかと尋ねれば、必ず何らかの理由が返ってくる。理由というのは「これこれこうだから、こうだ」という形式で述べられるものだから、著しく論理性が欠如していない限り、それは理屈である。


 人間は理屈で動いている、と思う。本当に理屈をなくして動こうと思っても、上手くいかない。学校をずる休みするのは、休みたいという欲求が根底にあるからだが、そういう場合でも、今日はいつもより若干気分が怠いからとか、もう起きる時刻を五分オーバーしてしまったからとか、何らかの理由づけをしようとする。それはやはり理屈である。その証拠に、こういうものは屁理屈と呼ぶ(この文章自体が屁理屈になっていないと良いが)。


 理屈をなくして、自分の気持ちに極限まで正直になるのは難しいから、あえて理屈を拵えてしまうのも良いと、自分は考える。残念ながら、ここに確固とした理屈はないが、考えようと思えばいくらでも考えられるし、実際に自分も今考えようとした(そして、これも「こうだから、こうだ」という形式で述べられているので、考えようによっては理屈である)。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る