第342話 できないことはできない

 ときと場合によって、できることは限られている。当たり前の話だが、当たり前だという意識は普段はないように思う。


 たとえば、電車の中で本を読むことはできるが、パソコンを使って小説を書くことはできない。この場合の「できない」というのは、物理的に不可能という意味ではなく、周囲の状況や自分の状態といった様々な要素と照らし合わせて、結果的に不可能であること、つまりやりたくないということを示す。けれども、物事を効率的に進めようとすると、どういうわけか、そういう普通なら「できない」ことをやろうと思ってしまう。


 「できない」ことは「できない」と割り切るのが良い。一度やろうと挑戦してみるのは良いが、できるかできないかの判断は、すぐにつくはずである。一度やってみてできないと分かったら、無理にそれをやろうとはしない。無理にやろうとすると大抵上手くいかないし、効率的にやるというのが目的だったのに、結果として非効率になることが少なくないからである。


 「できない」と分かったことは、ひょっとすると「できる」かもしれないと思うのではなく、もともと「できない」ことだったのだと自分に思い込ませるくらいで良い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る