第330話 綺麗な文章は小説の必要条件か

 小説家を目指すなら、綺麗な文章が書けることが必要だ、と言われることがある。小説とは、文章で魅せる媒体だから、文章が作品の生命だというわけである。しかしながら、では、綺麗な文章とはどういうものなのかと思って調べてみると、明確な指標は存在しないことが分かる。一つの文に主語と述語が一つずつとか、逆説の前もしくはあとに読点を置くとか、そういうレベルのものしか出てこない。これらの技術は、小説以外でも文章を書く際に重視すべきことなので、特別小説を書くために求められる技術とはいえない。


 小説を書こうとして、初めにぶつかるのが、この「綺麗な文章を書く」ということだと思う。綺麗な文章と言われても、どうしたら良いのか分からないから、困ってしまうわけである。理想としている小説家がいて、なんとなくその人の文章の調子を真似てみようかと思っても、書いているのは自分だから、そう上手くはいかない。


 いきなり綺麗な文章を書こうとするのは、得策ではないと個人的には思う。それは、料理未経験の人が、いきなり美味しいご飯を作ろうとしているようなものである。まずは一通り調理の流れを知ること(つまり、最終的に料理を完成させるところまで至ること)の方が、余程大事ではないだろうか。

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