第221話 生きているとはどういうことか

 生きているとは、どういうことだろうか。


 呼吸をしている、拍動がある、身体が有機物でできているなど、様々な要素が絡み合った状態であることは確かだろうが、それだけでは生きていることにはならない。特に身体が有機物でできているというのは、植物の死骸を用いて作られた家具などがある以上、生きているという状態を規定する要素としては、それだけでは使えないことが分かる。


 母親の胎内にいる胎児は、生きているといえるだろうか。もちろん、法律によって何ヶ月から生命があるものとして扱うと定められているから、法的には生きているといえる。しかしながら、胎児は母親によって「生かされている」と考えることも容易い。自分で呼吸をしている、自分で栄養を摂取しているとは言いがたい面があるからである。


 このように、生きているというのがどういう状態なのかを解き明かすことは、かなり困難を極める。解き明かすというよりは、定義するということだが、定義するとはその内と外を明確に分けるということだから、当然慎重にならなくてはならない。


 生物学、物理学、天文学と、人間は様々な学問を発展させてきたが、未だに生きているとは何かといった、酷く根本的な問いに対する答えを得られていない。

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