第195話 選択肢をあえて絞る意味
選択肢が多すぎると、何か一つを選んだ場合の不満が大きくなりやすいらしい。たとえば、スーパーマーケットのセールコーナーで、様々な種類の食パンが大幅に値引きをされていたら、どれを選んだら良いのか分からず、選んだら選んだで、今度は別のものにしておけば良かったという気持ちが強くなる、ということである。
これは、文章を書く際にもいえることだと思う。作家は語彙が豊富で、多種多様な言葉を巧みに使い分けて書くというイメージがあるが、そういうふうに選択できる語彙が多ければ多いほど、一度書いたものをさらに手直ししたくなってしまう。「そこに行く」という事態を表す表現だけでも、「行く」や「足を運ぶ」、「足を進める」など多彩な表現があるわけで、その状況に最もマッチするものを選ぼうとすると、どれにしたら良いのかっ分からなくなってしまう。
これを防ぐためには、予め自分が用いる語彙を絞っておくしかない。上記の例なら、「行く」と「足を運ぶ」しか使わないと定めておくわけである。食パンを選ぶ場合も同じで、セールでなくても自分がいつも買っているものを選ぶと決めておけば、選ぶのに迷うことも、不満感を抱くこともない。
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