第124話 不明瞭な境界線

 空とは、どこからをいうのだろうか。遥か上方に雲が浮かんでいるが、自分が立っている地点からその地点までも、空気は連続しているわけだから、空だといえるかもしれない。しかし、地上から数センチ飛び跳ねただけでは、空を飛んだことにはならないし、スカイダイビングといって、数メートルの高さを飛んだだけでは、スカイダイビングといえるか疑わしい。


 はっきりとした境界線がないのに、該当するか否かを決められる場合が沢山ある。そのとき、本当は境界線は存在しており、それを明確に示せると考えるか、境界線は存在しておらず、時と場合によって適宜判断をしていると考えるかによって、ものの捉え方が変わる。


 はっきりとした境界線が存在すると考えた場合、それを示して定義しなくてはならない。ただし、この考え方だと、すぐに問題が生じる。たとえば、高さが三十メートルの地点から空だと定めた場合、二十九・九メートルの地点は空ではないことになる。三十メートルと、二十九・九メートルの違いを、感覚的に判断できる人間はそう多くいないと予想できるので、この定義は人間の直感に反することになる。


 というわけで、ちょうど良い度合いで適宜判断すれば良い、という話になるのだが、では、ちょうど良いというのは、いったいどれくらいの度合いをいうのだろうか。

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