第101話 何よりも重要な過程

 詳細な説明は、忌避される傾向がある。過程の説明はどうでも良いから、結論を早く述べてほしい、ということらしい。しかし、それでは、本当の意味で結論を理解したことにはならないし、そのときは結論を利用することができても、ほかの場合に、過程から応用を利かせることができなくなってしまう。


 映画や小説などの創作物では、どういうわけか、オチが非常に重要視される。終わり良ければすべて良し、という諺があるように、最後の落とし所がしっかりとしていれば、そこに至るまでの過程はどうでも良い、というふうに受け止められる。しかし、本当にそうだろうか。


 終わりさえ良ければというのは、途中経過を無視する考え方だが、むしろ、本当に重要なのは、どのような過程を経て、そのような結論に至ったのか、といった道筋のはずである。同じAという答えに至る場合でも、人によって、その答えを導き出す道筋は異なる。たとえば、「あなたは生きたいか」という質問に対して、多くの人間が「生きたい」と答えると思われるが、「生きたい」というのが結論だとすれば、「どうして」生きたいのかというのが、その結論に至るまでの過程であり、それが何よりも重要なはずである。


 答えがAになっていれば良い、というのは、人の個性を無視するような考え方ではないだろうか。

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