第77話 理由がないのにやっていること

 理由がないのにやっていることは意外と多い。


 たとえば、どうして挨拶をするのだろうか。挨拶をする意味を問われて、答えられる人がどれほどいるだろう。挨拶というものは、個人の時間の捉え方によってするかしないかが変わる。一日というサイクルがあって、眠ったらリセットされると考えている人は、起きたらおはようと言うが、夜更しして一睡もしていない人や、そもそも、時間を連続するものとして捉え、一日というサイクルを意識しない人には、おはようと言うタイミングはない。さらに、どれほどの距離まで離れたら別れたと認識するかによって、さようならを言うか言わないかも変わるだろう。ちょっとトイレに行くときにさようならと言う人はいない。


 ほかにも、特に明確な理由がないのに、食事をするときは箸を使ったりする。スプーンやフォークの方が遥かに使いやすいのに、なぜ、使いにくい箸で毎回食事をしなくてはならないのか。子どもに質問されて、答えられる人はいるだろうか。


 これらのことは、いわゆる「当たり前」として認識されていることだから、それをしないだけで批判の対象になりえる。しかし、「当たり前だから」というのは理由になっていない。

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