第76話 抽象的なものを望む
結局のところ、人間は具体的なものではなく、抽象的なものを望んでいる、と感じることがある。
たとえば、マンボウはマグロと同じ味がするらしいが、それならマグロに拘る必要はないはずである。マンボウをマグロの刺し身として出したら分からないわけで、マグロと思い込んで食べてしまえば、それはもうマグロを食べているのと同じことになる。つまり、人間はマグロを食べたいのではなく、マグロと同じように美味しいものを食べたいのである。
ほかにも、ある映画が面白いと、そのシリーズすべてを観たいと思うわけだが、何もそのシリーズに拘る必要はない。なぜなら、映画を観るのは面白い思いをしたいからであり、その映画を観たいわけではないからである。シリーズものの一作目が面白いと、二作目も面白いと錯覚しがちだが、二作目が面白くなかったら、もうその続きを観ないという選択をすることもできる。むしろそうした方が合理的だといえる。
さて、そうなると、運命の人というのはいないことになる。なぜなら、本当なら、一緒にいて楽しければ、相手は誰でも良いはずだからである。果たして、人間はこの考え方を受け入れることができるだろうか。
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