第71話 機嫌次第で変わる人間

 人間の多くの行動は機嫌に左右される。昨日同意されたある理屈を、今日述べると否定されることがある。特定の理屈はそんなに短期間の内には変わらないため、同意と否定の差異が生じたのは、その理屈を形作る理論が変化したからではなく、それを受け取る人間が変化したからだと考えられる。それが、多くの場合、感情、つまり機嫌であることが多い。


 機嫌に基づいて行動するようになると、どんどん他人の信頼を失う結果になる。というのも、人間は論理的に思考・判断する生き物だからである。しかしながら、人間は機嫌に基づいて行動することが多い。これらのことを言い換えれば、人間は自分の行動は感情的な判断に従い、他人の行動には論理的な評価を下す傾向がある、ということになる。随分と自分勝手な生き物だが、だからこそ、できるだけ自分の行動も論理的に規定しようとする努力が生じる。この努力が、今の科学を作っているのではないか、と個人的には思う。


 しかしながら、一見論理的に物事を述べているように見えても、実は間違ったこと、つまり感情的な判断の結果を述べている人というのも存在する。そういう人の主張をよく聞いてみると、事実を述べているのではなく、こうだったら良いといった自分の理想や願望を述べていることが分かる。これを見分ける力をつけることが、すなわち科学的な人間になれるか否かを決定するのではないか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る