第69話 人為的か自然か

 人為的とはどういう意味だろう?


 広義の意味としては、人間の手が加わっている、という意味だと思うが、人間と関係があるものはほとんど人間の手が加わっている。たとえば、人間の子どもは人為的なものといえなくはない。自然なものとして認識されることが多いが、人間が人間の能力を使って生み出すのだから、人為的なものだろう。そうすると、人間のクローンを作るのが規制されるというのが、少々おかしいことになる。なぜなら、一卵性双生児はクローンと同等の性質を帯びているのにも関わらず、母胎の中で生じるか、外で生じるか、といった違いで区別(差別)されるからである。


 このように、人為的なものか、それとも自然なものかという違いは、実は明確には区別できない。自然なものに見える場合でも、よくよく考えてみれば人為的といえる、という例は少なくない。天気という、一見すると自然なものに見えるものでも、人間の活動が気候の変化に関与しているのは間違いない。


 しかしながら、少し観点を変えると、また違った見方をすることも可能になる。それは、人間も自然の内に含めてしまう、という見方である。この観点をとると、そもそもの問題として、人間は動物であり、動物は自然なものなのだから、人為的なものなど何一つなく、すべて自然なものである、という主張が可能になる。

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