第5話 感謝は本当に必要か?

 自分は、ありがとう恐怖症だ、と感じることがある。こんなことを言うと、笑われるに違いないから、あまり言わないようにしている(と言っておきながら、ここで言うのは、なぜか)。


 自分が何かをして、ありがとう、と言われると、ちょっとした恐怖を感じる。恐怖、というのは言いすぎかもしれないが、不安、というか、疑問、というか、そういうものを感じてしまう。なんというのか、自分の行いに対して、自分に感謝する人がいるということが、甚だ不思議で、どうして、そんなことを言うのだろう、と思う。


 もちろん、相手が心の底から感謝しているかどうかは分からない。けれど、自分なんかに感謝しなくても良いのに、と思ってしまう。これは、人の感情が理解できないといった、欠点かもしれない、とも思うが、まあ、そんな欠点は、人それぞれいくつかあるだろう、ということで、あまり気にしていない。


 さて、それでは、感謝というものは、どうしてする必要があるのだろう? これは、おそらく、今相手に感謝しておけば、未来にも、また、相手に自分にとって得になることをしてもらえる可能性が高くなるから、だと思われる。このように、感情がはたらくのには、きちんとした理由があることが多い。

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