第67話『思い出のサンフランシスコ・5』
オフステージ(こちら空堀高校演劇部)
67『思い出のサンフランシスコ・5』
世界高校生徒会会議というものがある。
読んで字のごとく、世界中の高校の生徒会の代表が集まって、あれこれ話し合う会議であり高校生の親睦の世界組織。
三年に一回世界各都市で世界大会が開かれる。
で、いろいろの事情や成り行きで、わが大阪府立空堀高校が選ばれ出不精の会長になり代わって、不肖瀬戸内美晴が今年度の開催地ニューヨークへ赴いた。
それが、なんでサンフランシスコに居るかというと、トランプ大統領がらみで一時的に治安に不安がでてきた。
でもって、中止になったんだけど、これじゃ申し訳ないというので、アメリカ各地の代表が希望する国の代表をそれぞれの街に招待したわけ。
多分くじ引きだと思うんだけど、サンフランシスコ代表のミッキー・ドナルドの家にお世話になることになった。
ほんとは、地元の高校生や生徒会のメンバーと交流の予定だったんだけど、アメリカの高校生の夏休みはメチャクチャ忙しい。
なんたって夏が学年の変わり目で二か月の休み。二か月もの夏休み中に将来に向けてのスキルアップやボランティア活動やらの日程が目白押しなわけ。
「なんとか都合の付くメンバー集めるよ」
ミッキーが胸を叩いてから四日がたった。で、その間、ミッキーがあれこれと観光案内をしてくれている。
以上のことを一瞬の間に思いめぐらせた。
「ゴールデンゲー...」の画像検索結果
なんでかというと、ゴールデンゲートブリッジが見渡せる丘の上で、いきなりミッキーがキスしてきたから。
でもって、アメリカ人のくせに、ミッキーは、とってもヘタクソ!
なにかって? キスよキス!
信じられる!?
ミッキーの様子に「え?」と驚きの表情の口に、ミッキーの口が迫って来たのよ!
ミッキーは20センチも背が高いので、まるで急降下爆撃みたいに迫ってくるわけよ。
ガチって音がした!
信じられる!?
歯と歯がぶつかって火花が出た!
イッターーーーーー!!
あたしは口を押えてしゃがみ込んだ。
ミッキーに悪意が無いことは分かっていたし、歯をぶつけたあとは大きなドンガラでワタワタしている。
とっさに考えた。
逃げたり叫んだりしたら、ミッキーはきっと捕まってしまう。
アメリカはバイオレンスとハラスメントにはめっちゃ厳しい。わたしが驚きのあまりパニクったりすると大ごとになる。
だから、恋人同士のちょっとしたトラブル風にってか、ラブコメアニメのワンシーンみたいなリアクションをとったわけ。
で、痛いし理不尽な状況で自分をなだめる為に、ここに至る流れを反芻しておったわけですよ。
オ、オ、オ、ソーリーソーリー、ア、ア……イ、ベッグ ユア パードン!
パニクったのはミッキーも、大きなドンガラでひたすらワタワタ。
声を聞きつけたあちこちのアベックさんたちが不振の声を上げている。
エーイ! もう一発ラブコメ的処理を!
わたしは立ち上がるとミッキーの胸をポカポカしながら泣き笑いをしてやった。
これが功を奏して、不審に思っていたオーディエンスのみなさんは安堵の様子。
でも、オーディエンスの中にミッキーの叔母さんが居て、この様子を写メ付でお父さんに送ってしまった。
「ミッキー、テメーー正直に言わないとブチ殺すぞ!」
家に帰ると、ミッキーパパが拳銃を構えていたのには寿命が縮んでしまったのだった……。
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