爺ちゃんに貰った指輪はチート級!もらった俺は残念級!~追い出された俺は指輪と共に成り上がる~
めしそば
プロローグ
プロローグ1
「お前はもう、うちの子では無い! 今すぐにこの家を出ていけ!」
温厚な父親の初めて見る形相とその大声に、俺はめっちゃビビった。
むしろチョットちびった。
周りを見渡したけど、自分の味方になってくれるのは、母親であろうが、妹であろうが、兄貴であろうが、メイドであろうが、執事であろうが、誰一人居らんかった。
皆一様に冷たい目で、俺を責め立てる。
なんやねん、ちょっと度が過ぎただけやん……
と心の中でつぶやきながらも、確かに今回は俺が悪い。
せやけど、まさか家を追い出されるほどとは……とほほやわ
我が一族は皆頑固で意固地やねん。
出ていけとあれだけ強く家長もとい領主に言われてはその言葉は絶対なんよね。
次男坊の俺ごときが何を言っても無駄なんよ。
そういえば、爺ちゃんは我が家の気風は”もっこす””じょっぱり””いごっそう”とか謎の呪文をよく口ずさんどったな、と現実逃避にしけこんだところで、覆る事のない事実にしぶしぶと顔を俯けて踵を返す。
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十二歳のまだ成年もしてへんあどけない少年に対しての仕打ちちゃうっちゅーのと心の中でぼやきつつ、何でこんな事になったんやったっけ?
ちょっと頭の中整理せなあかんな。
両のコメカミを両の人差し指でぐーりぐり、ったらグーリグリ。
爺ちゃんに昔教えてもろた、困ったときに考える鉄板の仕草やで。
当自比5割増しの仕草で今まで何度も助けてもらったんやで。
頓珍漢珍ちーんってな。な?
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「ひゃーっはっはっはー」
静かな森の中腹で愉快な大声が響き渡る。
少年の目には魔法で作った落とし穴に転落した青年が映っている。
青年は大きな口を開け、放心している。
たますぃー(魂)が口から抜け出すかと思わなくもない。
その青年が落ちる瞬間から全て見ていた少年は全く悪びれる様子も無く笑い転げている。
落とした犯人は言わずもがな、その少年だ。
少年にとって、落とし穴を作るなど朝飯前で、悪戯は3度の飯よりも楽しみであり生きがいでもあった。
今日の落とし穴も沢山ある”ドッキリ”の内の一つである。
ある時は、教会の出入り口に”盥”なる木製の桶を扉が開いた瞬間に落下させ、入ってきた者の頭に当てて楽しんだりと、様々なドッキリを毎日のように領民に対して行うのだ。
落とし穴にハマった青年はラッカラ王国の辺境伯内に住む領民で、今日は日課である付近の山林に薪と山菜を拾いに行った帰り道で、背中には大きな籠をしょっていた。
村へ帰る途中の山林の中腹あたりで、不意に落とし穴に転落したのであった。
「あー、おもろかった」
と、お腹に手を添えて地面をのたうち回るほど笑い転げている少年は、しばらく笑いが止まらなかった。
やがて落ち着いたのか、ゆっくりと立ち上がり、落とし穴にハマった青年を助ける事もなく、何事もなかったようにその場を去ってゆく。
さらに追い打ちとばかりに穴を埋める。という事はせずに、むしろ穴の底には怪我をしない様にと配慮した枯れ葉を緩衝材として敷いているのは少年の悪戯のルールによるものだ。
悪戯はするが、怪我は絶対にさせないのだというルールは領民にとって誰もが知る事である。
だがしかし、そんなありがた迷惑など誰一人として欲してはいなかった。
穴に落ちた青年は、何が起こったのか最初は分からなかった。
突然の浮遊感の後、落下するという状況に思わず大事な部分がキュンとなる。
その後ドサリとやや前のめりになりながら、落ち葉の間に埋もれたのだ。
幸いにも痛みは全く無かった。
状況が理解出来たのは、大きな笑い声が一つと、去っていく黒い髪を見つけた時だった。
バカ坊主のいつものドッキリだ……
と、分かったところで、盛大にため息を漏らす。
いつものドッキリだと分かったら冷静になれた。
領民達にとって、バカ坊主のドッキリは最早慣れっ子なのである。
落とし穴はそんなに深く無く、自身の身長で手を伸ばせば地上まで出るのは簡単だ。
出るのには問題無いのだが、拾った薪や山菜が背籠から落下し、緩衝材という名の枯れ葉の中に埋もれてしまった事に気づいてがっかりである。
薪を拾い集めるのに相当に手間がかかり、いつもの事だと諦めつつ内心では(バカ坊主なんて死ねばいいのに)と強く思ったのであった。
しかし反抗出来るほどの度胸は無い。
領主一族に逆らっても何も良いことなど無いのだ。
なんであの好領主から、あんな息子が生まれるのか?と思いつつ泣く泣く帰路へと向かう。
その足取りは重い。
近くの木の影から青年が帰路に向かう様子を悪戯を実行した少年はクスクス笑いながら見送った。
青年を見送った後、自身も帰路に向かう。
帰路に向かいながら、笑い転がった際に汚れた服を”ウォッシュ”の魔法で払いのけた。
ウォッシュの魔法は水と風と火の属性を組み合わせて行う少々高度なオリジナル魔法であるが、いとも当たり前にその魔法を使うのは領地内でも彼とその祖父のみである。
青年は家に帰り母親から、どこに寄り道をしたんだとこっぴどく怒られて夕食にありつけなかった。
あまりの理不尽さにしばらくの間、枕を濡らす日々が続いたのであった。
その時の俺は家を追い出されるとは露ほども思ってなかった。
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