第二話  出発

シャウルはハーナイルがあまりにも簡単に承諾してくれたことに驚いたが、早速これからの予定を整理した。まず戦いの疲れをとるために少し休んだのち、食料を用意して大樹ヨルフの神器が完成すれば準備完了だが、問題はどれだけの食料が必要になるかだ。今現在のシャウルの貯蓄では一月分以上の食料は用意できない。

シャウル「ハーナイル、ジュコイルでは金で食糧を買うシステムはありますか?」

ハーナイル「もちろんあります。金貨もオウルで使っているもので大丈夫です。」

シャウル「教えていただきありがとうございます。」

シャウルは少し安心した。と言うのも森の賢者であるシャウルは基本必要なものは自給自足なので過去にオウルの魔術師に協力した時にもらった金貨をたんまりため込んでいるのだ。

シャウル「では大方これからの予定は決まったので私はこれで。何かコスロー内で問題はありますか?」

ハーナイル「特にありません。寝床も食料も必要ありません。野宿には慣れていますしもう朝なので。」

シャウル「あなた方には感謝しています。」

そう言うとシャウルは家に帰り、もう日が昇っているが仮眠を取った。シャウルはジュコイルの魔術師たちを野宿させたまま自分だけ寝床につくのは気が引けた。

しばらくするとシャウルは目が覚めたというよりシャウルはまだ眠たかったが昼の太陽が窓から差し込み寝ることができなかった。

シャウルは袋に金貨を詰め、背中に大樹の知恵を背負い、その上から金貨の袋を背負い、大樹ヨルフのもとへ行った。コスローはもう木々が弱り以前の様な生き生きとした景色はもうない。これがいずれ枯れ木だけになり大樹ヨルフでさえただの枯れ木になると思うとシャウルは胸が締め付けられるようだった。

シャウルは大樹ヨルフのもとへたどり着いた。大樹ヨルフの足元には大量の枯葉が落ちているがまだ丈夫さを保っている。

シャウル「ヨルフ様、お知らせがあります。」

ヨルフ「シャウルか、なんだ?」

シャウル「マユイルの探し物の手伝いのためにジュコイルへ行くことになりました。弓の完成はまだですか?」

ヨルフ「弓の強化はすでに済んだ。足元に置いてある。」

シャウルはヨルフを見上げるばかりで足元に不注意だった。足元を見ると以前よりもまた一回り大きくなった弓が置いてあった。手で触れると分かった、木の素材も変わり全体的に丈夫になっている。試しに魔力を込めるとシャウルの手で引くには大きすぎるほどの以前よりも長く丈夫な矢が現れた。

シャウル「ありがとうございます。では私はこれでもう行きます。」

ヨルフ「今回も期待している。吉報を待っている。」

ヨルフがそう言うとシャウルは弓を持ち、家に神器を取りに行こうとした時、ふと大事なことを忘れていたことを思い出した。情報と言えばシャウルはまだ一度も大樹の知恵を利用していないのだ。シャウルはすぐに背負っていた金貨袋を下ろし、大樹の知恵を開き地面に置いて開いた。

大樹の知恵には特に長い文章も絵もなく一つの文章だけが書かれてある。それはこうだ。

(ユリギエルの杖は洞窟の暗号を解いた先にある。ジュコイルの聖女だけが暗号を解ける。)

とにもかくにもシャウルは今から洞窟へ向かうということで間違えないと確信した。

その後シャウルは家へ帰り、大樹の知恵以外の神器と金貨を持ち、ユミユルに木の実をやり、ユミユルにまたがり、ジュコイルの魔術師の方へ向かった。

ジュコイルの魔術師たちは昨日と同じ場所で三つのグループに分かれ、全員その場に座ったまま寝ていた。

シャウルはハーナイルの方へ向かい、話しかけた。

シャウル「ハーナイル、私は準備が整いました。」

ハーナイル「では行きますか?」


そう言うとハーナイルは眠そうなマユイルを起こし、ほかの魔術師たちはそこに置いたままシャウル、マユイル、ハーナイルの三人だけで出発した。

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