第十二話 ダラス脱出

四人は巨大な木を見てどうやって倒すか考えた。なんせ単純に正面から突進して攻撃してくる魔物と攻撃方法の分からない巨大なものとは倒し方が違う。まずはシャウルが矢を一本放ち魔術師を縛っている木のツルの一本を打ち抜いた。木のツルがすぐにもう一本魔術師に巻き付いたが木はこちらには攻撃してこない。シャウルはその調子で木のツルへ連射してどんどん木の体力を消耗させていく作戦に出たがそのたびにツルを再生し、魔術師に巻き付いた。うち続けていても魔術師の魔力を吸い取られ続けてらちが明かないのでマユイルがパスジルの額に触れパスジルを無理やり起こすとパスジルは木に五人の魔術師が縛り付けられている状況を見た後一言も話さずに木のツルに高速連撃を打ち込み、木の再生を上回る速さで切り込み、あっさり四人を取り返すことができた。五人目を木のツルから引きはがした瞬間、木のツルが大量に増殖しパスジルを襲った。パスジルは全力で木のツルを切り続けているが、一本ツルを切るたびに三本ツルが生え、徐々に本調子が出ないパスジルを追い込んでゆく。

シャウルは弓矢で援護し、モーシーも炎の魔術でツルを焼くが木の膨大なツルの量に押されている。シャウルがとっさに風の力に切り替え、モーシーの炎の魔術にうる覚えの知識で風を送り込み、炎を強化した。今度はツルを焼く速度が再生の速度を上回り、徐々にパスジルが木に近ずいていく。最後はパスジルが剣で強烈な斬撃を木の幹に打ち込み、斬撃の傷を炎が焼き、木の活動は止まった。そしてパスジルはその場で気絶した。

すぐにマユイルが五人とパスジルを応急処置して魔術師のうちの三人はユミユルの後ろに乗せて、パスジルと残りの二人はモーシーの鎖の魔術で縛って運んだ。

四人は激しい戦闘でかなり消耗していたために魔物化を忘れていたが、幸運なことに魔物には出会わずにバリア空間へ帰ることができた。

バリア空間へ戻ると真っ先にマユイルが座り込んで、疲れを見せた。三人はパスジルを含め気絶している八人をどうやって運び出そうか考えた。結果的にシャウルのユミユル(巨犬)に運ばせるのがいいという結論に達した。

マユイルは疲れているが、バリアを解くわけにはいかないためシャウルは休むことなく、まずはパスジルとほかの三人の魔術師をユミユルに乗せ、ユミユルを全速力で走らせソルゴー(ダラスへ向かう時に乗った馬車の様なもの)へと向かった。

捕えていた魔術師がさらわれた騒ぎで魔物が犯人捜索のためにダラス全体にはびこっており、四人の魔術師を落とさないように風の魔力でフォローしつつ魔物には構わずに蹴散らしてユミユルを走らせ続けた。

ソルゴーの前にはミルオースが待っており、魔物が近寄らないための見張りと、シャウルが来た時のためのお迎え役をしていたのだ。

ミルオース「シャウル殿、救い出してくれたのですか。」

シャウル「ミルオースさん、この人たちをソルゴーの中へ。」

ミルオース「かしこまりました、直ちに。」

シャウルは魔術師たちをミルオースに預けてすぐに残りの魔術師とマユイル、モーシーを連れて帰るためにバリア空間へ走り出した。

バリア空間の中に入ると再び、残りの四人をユミユルに乗せて、モーシーとマユイルも一緒にバリア空間の外に出て、ソルゴーのある方へ走り出した。シャウルが先頭を走って道を切り開きながら、何とかソルゴーのある所にたどり着き後ろから全速力で走ってくる魔物にあと少しで追いつかれるというところで何とか全員をソルゴーに乗せ扉を閉めた。

シャウル「早く出せ。」

そういうとミルオースが全速力でソルゴーを走らせた。



三十秒ほど走り続けると、ミルオースが大きな声で言った。

ミルオース「脱出成功です。」




パスジル奪還編    完

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