第十話 救出

シャウルは何匹もの異様な形をした魔物がうじゃうじゃいるのを見て吐き気がした。幸運なことにシャウルたちは魔物の姿をしているので、見つかることはないが、正直これからあの魔物の群れの中に入って魔術師を探すのは精神的にきつかった。一行はいったん扉の外に出て、作戦を立てた。

マユイル「おそらくですがこの廊下の右側にある扉のすべてに魔物が収容されており、拷問はもっと少数で別の場所でやっていると思います。」

モーシー「私もそう思う。あれは集った魔物を収容するための場所なのだろう。」

パスジル「しかしあの魔物の中に侵入してうまく情報を聞き出せるのでは?」

シャウル「それもいいが、もしばれれば私たちとてひとたまりもありません。」

マユイル「なんにせよ場所を一つ一つつぶしていくしかありません。この部屋に魔物の大半がいるのであれば他の部屋や場所にいる魔物の数は少ないはずです。リスクのないところから順につぶしていきましょう。」

モーシー「私もそう思う」

シャウル「私もです。」

パスジル「それでいいでしょう。」

一行は次の扉を一つ一つ探っていった。廊下には合計十個の魔物収容所があり、そのうち六つが魔物で埋まっていた。

廊下の奥には急に雰囲気が変わり、洞窟のようになっていて、青い光で洞窟がほのかに照らされている。洞窟は奥へ進むと急に開けて中心に泉のある広い空間になっていた。すでに青い照明により洞窟っぽい雰囲気になって奥には照明がないのでよく見えない。

マユイルが泉に手を触れてみたが普通の水の様だ。マユイルが証明を奥へ飛ばし、洞窟の奥を照らすと、二人の人間が十字架にかけられたままひどく傷つきながら気絶している。マユイルが治癒のために十字架にかけられた人間に近ずき触れようとすると、十字架の陰から刃物を持った魚人の様な魔物がヌルッと出て、マユイルに襲いかかった。即座にパスジルが反射神経でマユイルと魚人の間に入って、攻撃を防いだが、もう一つの十字架からも魚人がはい出て、マユイルに襲いかかったがシャウルが矢を飛ばし、魚人の眉間を貫いた。

パスジル「なぜ私たちが敵だと分かった。」

魚人「お前が手を触れ回復させようとしていたのははっきりわかったぜ?」

シャウルはいったん変身の魔法を解き、マユイルが後ろに下がったのを見て、パスジルも後ろに下がった。

マユイルは使う魔術はすごいが、近接戦は苦手なようだ。

シャウルが矢をつがえ、魚人の眉間に焦点を合わせて打とうとした瞬間、周りの岩の陰から大量の魚人がはい出してきた。単純計算で百人はいるだろう。

マユイル「三人とも息を止めてください」

そういうとマユイルは洞窟を霧で埋め尽くし、五秒くらいすると霧を解いた。

マユイル「もう息を吸っていいですよ。」

シャウルは何をしたのだろうと思いながら、矢を三本つがえ、適当に打った。目の前には魚人しかいないので適当に打ちまくれば誰かにはに当たった。

しかし魚人の怒りをかってしまい、魚人が一斉にこちらに襲い掛かってきた。まずはパスジルが前に出て魚人を切り倒していったが、次の瞬間ほとんどの魚人が血を吹いて倒れた。

シャウルはすぐに今の現象がマユイルによるものだと分かった。初めに五秒間発生させた霧が毒の霧だったのだ。

魚人は数秒の間に全滅し、きれいだった泉は魚人の死体と血の匂いだけになっていた。四人はまだほかに敵がいないか特に、後ろから来ていないか確認した後、シャウルが弓矢で十字架の根元を折り、オーギル(風のマント)の風の力で二人の人間をシャウルの方へ運び、十字架から引きはがし、マユイルに確認させた。

マユイル「二人とも息はまだありますが、今できるのは応急処置程度です。」

モーシー「とりあえず四人でバリアのはってある場所へ向かい、この二人だけバリア内に置いていくか?」

シャウル「くどいですがいったん二人だけ助けて置いていきましょう。二人分の荷物を背負ったままでは戦えません。」

ではこの場にワープ用の魔術式だけ書き込んでおきましょう。


マユイルがワープ用の魔術式を書き終わると、一行は来た時と同じ手順で魔物をよそおいながら、バリアのはってある場所まで戻った。

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