第九話 地下空間

シャウルには魔物の言葉を聞いた後、二つの疑問が浮かんだ。まずファボールとは邪神なのか、それとも破壊神なのか、そして炎の悪魔メジクリアスとは誰なのかという疑問だ。続けて、マユイルが質問をした。

マユイル「メジクリアスは今どこにいるのですか?」

魔物「ダラスの中央にある大きな建物の地下です。」

マユイル「魔術師たちはどこにいる?」

魔物「魔術師たちも同じ場所にいます。」

マユイル「なぜパスジルとほかの魔術師を別々の場所に捕えている?」

魔物「パスジルに他の魔術師と比べて特別な才能を見たメジクリアス様は情報を聞き出す以外の使い方を思いつき、念のため、見つかりにくい場所に隠しておいたのです。」

マユイル「メジクリアス以外にどのような魔物がいる?」

魔物「メジクリアス様は来たるべきファボール様復活の日に備えて、コスローの大森林を攻め落とすための軍勢を編成しており、現在一万の魔物がメジクリアス様のもとへ集っています。すでにコスローの大森林へは影の魔術による弱体化の攻撃が一部始まっています。」

マユイル「その魔物も魔術師がとらわれているのと同じ場所にいるのですか?」

魔物「その通りです。」

マユイル「なるほど。今聞きたい情報は聞けました。他に聞きたいことがある方はどうぞ」

シャウル「では私から一つ。現在ミスティアの地にはメジクリアスと一万の軍勢のほかに影の軍勢はいますか?」

魔物「魔物たちの中では近いうちにもう二人の側近も復活なされるといううわさがありますが、真実かどうか断定はできません。」

シャウル「私からは以上です。」

モーシー「私からもない。」

マユイル「それではもうよろしいですね。」

そう言うとマユイルは杖から強い光を魔物に浴びせ、干からびるように魔物は消滅した。

マユイル「さて、それでは行きましょう。」

三人は上にいるパスジルに魔物から聞き出した情報を伝え、霧のバリアを解き、ダラス中央の大きな施設へと向かった。

中央の大きな施設はおそらく元はダラスの貴族的地位のものが住んでいたであろう立派な作りで、大きな縦長の石作りの直方体の外見をしており、入り口から仲は見えない。シャウルが驚いたのは魔物が入り口を見張っていなかったことである。シャウルの予想では中央に近ずくにつれ、魔物の数が増えていき、少なくとも二戦は交えるだろうと思っていたが、静かなほどに一人も魔物がいない。

マユイルが手から光の玉のようなものを出し、入り口からなかに入れ、中を照らしたがそこにも魔物はいない。

一行が中に入ると中は何かの受付所の様な机の様なものが右奥に置かれ、左奥にはエレベーターの様なものがある。ところどころ待合のためのソファーが置いてあり、四方の壁には大きな絵が飾ってある。

とりあえず周りに隠し扉や手掛かりがないか調べて見たが、どうやら左奥のエレベーターらしきもの以外は怪しいものは見当たらない。ちなみにエレベーターと言っても浮遊魔法のかけられた大きな箱のようなものでおそらくここから地下へ下りられるのだろうと四人は考えた。

しかし、やはりおかしいと思ったのはここから地下へ下りられるのならセキュリティーが甘すぎるのだ。高確率でこの先に何かあるはずなので、何か情報が欲しいと思ったが、残念ながら今得られる情報はなく、行かないことには何も始まらないので四人でエレベーターに乗り、スイッチを入れ、作動させた。エレベーターは地下へは向かわず、上へと昇り、二階へ止まった。マユイルがあたりを照らすと何もない部屋の中央に巨大な魔術式が書かれており、十人の魔物が魔術式の周りを見張っていた。十人の魔物は全員同じ見た目で、もしも名前を付けるなら、青いエビ人間といったところだ。

全員右手にエビと同じ大きなハサミを思っており、左手のは右手より小さい。

エビ人間がこちらに気付くと一斉に襲い掛かってきたが、それと同時にマユイルが霧で部屋を埋め尽くしエビ人間の方向感覚を逆転させて、壁に激突させた音がするとマユイルは霧の呪文を解き、それと同時にシャウルがミトルス(弓矢の神器)から矢を三発放ち、エビのうちの三匹を仕留めた。

状況を把握できないエビたちが戸惑っているうちにパスジルが神速の速さで残りのエビをすべて狩りつくし、全滅させた。

マユイル「見事なコンビネーションでしたね。」

一行は魔術式を取り囲み、解き方をいろいろ試してみたが最終的にはエビ人間の持っていた大きな透き通った緑の石の様なものを魔術式の上に置くと、魔術式が反応し、地震の様なものが部屋全体を揺らし、ガラガラと音を立てながら二階の部屋ごと下へと下がり、しばらく下がり続けると、高さが五メートル、横幅は三メートルはある長い長い廊下の様な所へ出た。廊下の右側には大きな扉が十メートル間隔で並び、微妙に薄暗い雰囲気が漂っている。シャウルは変装のために呪文を唱えた。

シャウル「マダル (変われ)」

そう唱えるとシャウルの見た目がついさっきのエビ人間のようになった。

次に他の三人にも同じ魔法をかけ、エビ人間に変えた。

マユイル「個人的にこの姿はあまり好みませんが致しかたありません。」

一行がまず一番前の扉を開けると、そこには



縦二十メートル、横十メートルはある大きな空間に数えきれないほどの大量の魔物が集結していた。

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