第11話「ただいま?」
「いやー、やっぱり良いことした後って気分が良いよねえ!」
「ああ、とても清々しい気分だ!たまにはこういうことも悪くないな!」
「やっぱり良いことをするのは気持ちがいいですね」
と、私達は教会を後にして、それぞれの宿へと向かっている。
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「い、いいいいいい、一億エリスぅ!?たしかに良いお宝だと思ってたけど......。こ、ここ、こんなに!?」
「あわわわわわわわわ............」
「ふむ、流石に一億エリスというのは驚きだな」
皆、大金を目の前にして驚きを隠せない。クリスは声を荒げて驚き、レナに関しては口をあんぐりと開けたまま、そのまま固まっている。
私は一応貴族だから、二人ほどの驚き方はしないがそれでもかなり驚いている。
私達は報酬を受け取り、酒場の席に着く。
「こ、ここ、このカエルの唐揚げはやっぱり最高だよねーーー」
フォークを持つ手は震えており、食器とフォークが当たり、カタカタと音を鳴らしながらクリスは言った。いやしかし、
「クリス、それはキャベツだぞ?大丈夫なのか?」
「あっ、ホントだーーー。あたしったら、うっかりーーー」
明らかに動揺している。これまでの酷いくらいの棒読みがそれを顕著に表している。だが、
「ふ、ふふふ、お母さん、私、異世界で大金持ちになりましたぁ.........」
レナが遠い所を見ながらゆらゆらと揺れて、よくわからないことを口走っている。
このままではいけない。私がなんとかしなくてはな。
「クリス、レナ、私から提案なのだが、お宝の買い取り額の一億エリスの内、一人百万エリスずつ、合計百万×三人の三百万エリスを私たちが受け取り、残りの七百万エリスを教会に寄付するというのはどうだ?」
二人は少しの間、目を点にしてフリーズしていたが、突然はっとして、
「それはナイスアイデアだよ、ダクネス!」
「はい!私も賛成です!こんな額のお金、私にはとても怖くて扱えません!私も寄付が良いです!」
一億エリスが二人にはよほど堪えたのか、二人は机に手をつき、体を乗り出してこちらに訴えかけるように言ってきた。
ということで私達三人は夕食を食べた後、エリス教の教会に向かい、七百万エリスを教会に寄付してきた。
当然、エリス教会のプリーストにはこんな大金頂けません!と断られたのだが、二人の熱意?に根負けしたのか、折れるように寄付金を受け取った。
プリーストは顔をひきつらせて、クリスとレナは顔をホッとさせていた。なぜだろう、教会への寄付という善行を行っているはずなのだが、なぜか心が痛い。
そして、今に至るわけである。
しかし、今日は様々なことがあったなあ。
クエストから戻り、町で仲間と共に買い物、突然の高額の収入。楽しかったが疲れたな。
一応、クエストから帰ってまとまった休憩も無しに行動している。私の疲労感は二人とも同じだったのだろう。クリスは眠そうにしており、レナの小刻みに浮き沈みしている。
「今日は、これで解散にするか。明日と明後日は休みにして、三日後にまた集合しよう」
「「さんせーーい」」
二人の力のない、弱々しい返事が返ってくる。相当疲れているのだ。今日は私も早く寝るとするか。
街の広場で私達は解散し、それぞれの宿へと向かった。
「今日はひさしぶりに実家に帰るとするか......」
私はそんなことを呟きながら、夜の寝静まった街を歩きながら、実家の屋敷へと向かった。
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小鳥の心地の良いさえずりと部屋に射す暖かな朝日によって、目が覚める。ひさしぶりに見る光景だ。なにせ、屋敷から飛び出して飛び出してから、クリスと出会い、レナと出会ってダンジョン探索から帰還するまでずっと外泊だったのだ。その間約二週間ほど。
なんだかんだ言って、我が家というのはとても落ち着くものなのだと実感する。
私が感傷に浸りながら、朝食を取るべく一回の食堂へ降りて行くとそこには父がいた。
「おはよう、ララティーナ。よく眠れたかい?久々に帰って来てくれて嬉しいよ」
「おはようございます、お父様。ああ、昨日はよく眠れたぞ」
互いに軽い朝の挨拶を済ませ、朝食を取る。
「ララティーナ、冒険の方はどうなのだ?特に何も無かったのなら見合いを......」
「冒険者仲間が出来たぞ。それも二人だ」
「な、なんだと......」
父は驚きを隠せず、動揺している。それほどまでに私には冒険者仲間が出来ないと思っていたのか。
「ら、ララティーナ。言いにくいことがあるのだが......」
父が気まずそうに言ってくる。何を言ってくるのか大体予想はついてるが。
「む、なんだ?」
「見合いの話を組んでしまった......」
「のあぁぁぁーーー!!あれほどいらぬと言ったのに!!ぶっ殺してやる!!!」
前言撤回だ!落ち着いてたまるものか!!!
「ぶっ、ぶっ殺してやる!?ら、ララティーナ、お前そんな言葉どこで......って、ララティーナ!?待ってくれ、ララティーナァァーーーー!!」
私は再び家を飛び出した。
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