童貞ミーティング! ~おくて男子高校生2人が治外法権の部室で炸裂させる静かで熱い妄想。あるか、一発逆転彼女ゲット!これが青春ってやつですか?

安東 亮

第1話 そっくりな部分(その1)

「くだらないことなんだけどさ、たろちゃん」


 頬杖を突きながら飛島恭介が桂馬を跳ねさせる。


 奥川凛太郎りんたろうは反射的に歩を上げて、それを受けた。


「恭介君の話は大抵くだらないけど、今回は何?」

「厳しいなぁ」

「本当のことだから」


 恭介が将棋盤に落としていた視線をチラッと上げる。


 その気配を察知して、凛太郎は一瞬だけ目を合わせ、「で?」と先を促す。


「俺たち、女子のあそこを見たいわけじゃん」


 一瞬、凛太郎は息が詰まり、ケホケホと咳き込んだ。

 いつもの部室に二人きりとは言え、いきなり「女子のあそこ」などという言葉を耳にすると心拍が跳ねる。


「また、怖いぐらい直球だね」


 恭介は銀を桂馬の横に上げて、桂馬の頭を守った。


「見たいか、見たくないかと言えば?」

「何故、二択しかない?」

「俺の中では一択だけど?」

「じゃあ、改まって訊くまでもないじゃん」


 ペチ、ペチと駒が盤を叩く音が一定のリズムで部室に響く。


「これは重要な確認行為なんだよ。互いの理解に少しでも誤解があっては、残念ながら、俺がこれから話したい大切なことをたろちゃんと共有できない」


 そう言われると、答えざるを得ない。


「……見たい」

「少しか、かなりかと言えば?」

「それって、どっちかしかないの?」

「ないんだな、これが」

「かなり……かな」


 こんなこと、いくら恭介が相手でも将棋を指していないと言えない。

 駒に伸ばした指先が少し熱くなった気がした。


 将棋って会話だって思う時がある。

 自分の手で相手に問いかけ、相手の返答に合わせて、次の自分の手を決める。

 一手指せば、相手も必ず一手指す。

 そのルールのもと、盤を挟んでテンポ良くやり取りを重ねていると、普段言えないこともサラッと口にすることができることがある。

 しかも、この二人以外誰もいない将棋部の狭い部室の中だし。


「でしょ?やっぱ、そうじゃないと」

「言わされた感しかないけどね」

「しかし、見たい、見たいと思っていても見られない。それが女子のあそこ」


 恭介が声色を重くする。

 いかめしい学者が研究成果を説明するような口調だ。


「何それ」


 馬鹿にされた気分になる。

 だけど、少し笑ってしまう。


「そこで、俺は考えた」

「ん?」

「自分の体で女子のあそこに似ているところはないかって」

「ほう」


 馬鹿だなと思いつつも、先が聞きたい気はする。


「そして、俺は見つけたわけよ」

「へぇ。どこ?」

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