第9話 路地裏。もしくは君の中。

始まりから、一緒だった。

違うのは、性別くらいだった。

自分の中の一番最初の記憶から、彼女がいたんだ。

毎日寝食を共にしてきた。


他にも仲間は大勢いたけど、一番は彼女だった。一番、一緒にいた。


初めから、路地裏だった。

この世で一番薄暗い場所。


捨てられた俺達。誰にも助けは求められなかったから、大勢の仲間と、いろいろなことをした。

数えきれない、悪いことを。

他人を貶めたし、その分自分達だって落ちていった。悪いことなら何でもした。薬はどこででも手に入った。

女は春を売り、男は体を売った。


気品なんてない。だって、この暗がりだ。

一体誰が見てるって言うんだ?


それでも彼女は夢を見ていたらしい。

”女優になりたい”だと。

舞台に上がりたいならどうぞ。

ただ服を脱いで腰を振ってくれよ。


「この暗がりから、明るいところへ!」

彼女は、いつも言っていた。


もうすぐ俺たちも若くなくなる。

それなら、一発でかい若気のいたりを残してやろうかと、彼女の手を取った。


いいかい、自分で決めるんだ。

俺のこの手を放す時を。


昔から、何を考えているか分からない、何もかも考えている瞳。


その眼が、ひどく好きだった。

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