第2話
わたしの持つ元素は火だ。
「水、火、大地、空、etc…」多くの元素がある中で「火」を持てたのはわたしの生い立ちを語るに際して偶然ではないように思える。
初めて「黒の森」に入った時にも暖をとるほどには役に立った。
それらからくる能力への思い入れのおかげか、入学時に他の同級の人よりかは能力の程度が高かった。ついでに特待生の判を押された。
しかし、人間の器量というものは獲得の早さで測るものではないことを学んだ。それが今日のムラカミ君との授業活動だ。
まず、彼は特待生ではない。ないが、聡明であった。
さらに所属するクラスで一番に優秀、加えて人望も厚い…というのが友人の談だ。
そうして臨んだ活動だったが、終わってみればわたしには持ち得ないものに気付かされることとなった。
彼は特待生ではない以上、入学時にはわたしとは明確な差があったはずである。つまり今の器量については入学後に彼自ら獲得したものなのである。
わたしは孤児という境遇から、比較の場に立つことはなかった。それは勝ち負けのどちらにも不慣れということ。勝ちは人を増長させ、負けは人を壊すものという受け売りの認識しかなかった。
自分よりも下と区分されたはずの彼への極小の劣等感は、わたしが衛士を目指す上での精神に大きな不純を生んだ。
他から見れば小さく狭い「負け」なのだろう。だが、わたしははじめての比較に対して敏感になってしまった。
身勝手な理由だが、彼と馴れ合おうという気にもならず、わたしは放課になると今日も公園へと繰り出した。
公園は黄色い声や青息が混沌としている。
それを一瞥しつつ木に寄りかかりお弁当を食べるのだ。
そうすると、常に自分と公園の人間とは空間を共有しているような隔絶されているような不思議な感覚になる。ただすれ違い続ける空間の人間に混ざり、育ちも気にせず一としての人間でいられるのはとても楽だ。枝の揺れが秒針。おにぎりの数が分針。おにぎりを2つ食べたところで、その感覚は壊された。
ムラカミ、のように見えるが…ナタを持って公園を闊歩している。
この公園の異常に気付いた市民たちは避けるように距離をとる。しかしムラカミ?はそれが不満だったのか速足で、駆け足で市民の1人に近寄り……
大きくナタを振りかぶる!……
一閃!
ムラカミ?の唐突な攻撃を、唐突に現れたムラカミが細長い、いぶし銀にぬめる白刃で受け止めていた。
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