皆、異能の人間だもの

はむさん

第1話

わたしの小さい頃。街は大きな火災があった。


黒煙で霞む記憶の中でも、わたしの住む国の衛士に抱きかかえられて救われたことを覚えている。


両親を含めて同級の人間も死んでしまい、街も隅から天元まで炭になった。

しかし、物心がついたかも怪しい時分であったからその時は自分が幸運とも思わなかったし、孤児である自分も受け入れられた。


孤児となってから、およそ「大人」と思えた衛士に対して憧れを持つようになったのも当然だったと今では思っている。


孤児施設にいたわたしは幸いにも五体満足に育ち、わたしや他の人間を助けたあの衛士が従事する国を守る人間を目指した。

無論、今は研修をする身だ。



日が1番高くなる頃には座学、体操の授業も終わる。

放課となったわたしは三三五五、人の流れに混ざりながら学舎の側の公園に向かう。

桜が散り終わってからしばらく経つ公園は黄色い声や青息が混沌としている。

それを一瞥しつつ木に寄りかかりお昼の弁当を食べるのだ。

そうすると、常に自分と公園の人間とは空間を共有しているような隔絶されているような不思議な感覚になる。ただすれ違い続ける空間の人間に混ざり、育ちも気にせず一としての人間でいられるのはとても楽だ。

枝の揺れが秒針。

おにぎりの数が分針。

おにぎりが3つなくなったところで声をかけられた。


「君。特待生の人だよね。一緒に食べない?」

わたしは肯くと弁当を畳んで立ち上がった。


「ケイ君?だっけ。君さぁ、座学がいつも同じだよね。」


「そうだね。」


「一人で弁当を食べているのが見えてさ…。」

取り留めのない会話。彼の名前は「ムラカミ」だそうだ。


「ケイ君の元素はどれなんだい?」

ムラカミは弁当を片付け始めていた。

わたしは木の皮を剥がし、皮の先を燃やしてみせた。

ムラカミはやっぱり、という風で肯く。


「次の授業、俺と組まない?決まり!ね。」

弁当を片付けた彼は挨拶もそこそこに寮へと帰っていった。


「あいつの元素は…なんだったんだ。」

わたしのつぶやきはどこともなく風に消えた。








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