第14話『最大異端の百装無神(2)』
倒れ込んだ氷菓に駆け寄る。酷い汗だ。息も荒い。よく見ればその腕は、もう前腕の中ほどまでが半透明に消えているではないか。
血が逆流したかのような、気味の悪い冷たさが全身を駆け巡る。そんな馬鹿な、という焦りのせいで、喉が詰まって声が出ない。ついさっきまで、手首が消えるか消えないか、といった程度だったのに。
すぐ傍までやってきた美有が、氷菓の手を執って触診。彼女からいくつか反応を聞き出し、現状を聞き出す。舞花とよく似た美貌がさっと青ざめたところを見るに、どうやら状況は芳しくないようだ。
「いけない、進行が早くなってる」
「進行、ですか……」
やや弱った声で、氷菓が聞き返す。そういえば彼女は、まだ自分の症状について詳しい説明を受けていなかった。
「ええ。あなたの症状、有司の予想通り、異端生命化のそれに他ならないわ。あなたのレートは今、段階を飛ばして例外の領域に至りつつある。つまるところレート10よ」
「レート、10……」
それでも、然程驚いた表情を見せないのは、薄々感づいてはいたからだろう。
だがその腕が、小刻みに震えているのを有司は見逃せなかった。無理もない。今でこそ落ち着いているが、戦場での彼女の取り乱し方は意外なほどだった。
この辺は、舞花から聞いた話ではあるが。
兵装として全身が分解され、異端世界へと転移する感覚は、一般的にイメージされる『死』の感触と極めて近いらしい。手足の感覚が徐々になくなり、体の端々から命の鼓動が消え、冷たくなっていく。それが一瞬ではなく、長時間続くとあれば、どんな超人にとっても耐えがたい苦痛になることは想像に難くない。
有司はきっ、と顔を上げると美有に問う。
「止める方法は?」
「ないわ。もう数分もしないうちにレート10への移行は完了する」
「じゃぁ対処手段は!」
『無理。トレイズ・モールトンの《血清》は一時的にレートを上げるだけだけど、異端世界にたどり着いたあとじゃどうしようもない。兄様もそれは分かっているはず』
「ぐ……っ」
舞花からも否定されてしまった。
いいや、彼女の言葉通りだ。本当は有司も知っている。
舞花の封印を解錠した段階で、有司は彼女の――《この神殿をあなたの血で穢そう》が内包する最大の《異法行為》、ありとあらゆる異端世界を繋ぎ、あらゆる《異法》の効果を知る力を共有することができるようになっている。
金色の瞳を通せば、トレイズ・モールトンの『救済』が、施行されたが最後、止めることのできないものであることなど、一発で分かる。
「……ごめんなさい、私、あなたの道を一緒に行く、って言ったばかりなのに……」
「うっせ。そう思うならもうちょっと耐えてみろ。今解決方法を探してやるから……!」
憎まれ口をたたきながら、有司はデータベースの穴を探す。
しかし舞花の、異端生命においてなお、『神』と呼ぶにふさわしい存在の権能は完璧だった。彼女の情報に穴はない。どこの異端世界、どこの《異法》を以てしても、氷菓の消滅を止める手立てが見つからない。見つかるはずもない。
焦りが募る。どうすればいい、と答えの出ない自問自答を繰り返す。有司の迷いを払ってくれた氷菓に、一体なにをしてやればいい。
だから。
「……レート上昇を止める方法はないけど、現状を打破する手段はあるわ」
その声は、天啓の様に思えた。美有が少々厳しい表情で口を開いたのだ。
実際、天啓だったのかもしれない。有司と舞花、氷菓――《第三最大異端》に纏わる三人の運命を、大きく変える、という意味では。
「本当か!?」
「ええ。氷菓ちゃんには、ちょっと辛い決断かもしれないけど……」
言いよどむ美有。まぁ当然だろう、と納得がいく。通常の解決方法が存在しない現象への対抗手段なのだ。何の犠牲も払わない方法であるはずがない。
氷菓の現状は、あの日トレイズを完全に滅ぼせなかった自分の責任でもある。その犠牲、できれば軽減するか、あるいは肩代わりできればいいのだが、などと思っていると。
「ううん。今のあなたにとっては吉報かもね?」
美有が、にんまり、と表現するのが相応しい、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
あ、これ思ってるのと違う方向でとんでもない内容だ、と有司が冷や汗を流し始めるのと、氷菓と舞花が困惑気味に美有を問い詰めるのはほぼ同時だった。
「は、はぁ……その内容とは一体……?」
『姉様、勿体ぶらないで』
「簡単に言うとね。氷菓ちゃん、あなたには――」
なんだろう、デジャブを感じる。この空白。勿体付けるように姉が言葉を切るときは、続く内容は大体ろくでもないのだ。
例えば、そう。氷菓のこの先の人生をコストに支払うとか、そういう類の。
「――有司の所有物になって欲しいのよ」
果たして、その予感は正しかった。最も、その内容は想像していたラインを遥かに超えてとんでもないモノであったが。
理事長室を、逼迫した現状にしては間抜けなほどの沈黙が支配する。誰も言葉を発さない。呼吸の音すら耳を澄まさないと聞こえない。
「……は?」
『は?』
「ちょっ……」
次に放たれたのは、三者三様の疑問符であった。
氷菓は言葉の意味を確かめるように。
舞花は何を言われたのか理解に苦しむ、と言った調子で。
有司自身は、告げられた言葉の撤回を求めるように。
「な、何言ってんだこのクソ姉貴!?」
『完全同意。どういう意味か説明して』
「説明も何も、そのままの意味よ」
しかしその糾弾を、神無月の長はのらりくらりと躱していく。その表情はあくまで涼し気。つい先ほどまでの真剣な眼差しは一体何処へ行ってしまったのだろうかと不思議に思うほどだ。マイペースと言えば聞こえはいいが、少しは空気を読んで欲しい気もする。
やはりこの姉、信用しきれないというかなんというか。本人には特段悪気があるわけではなく、一種癖のようなものだというのだから、大変たちが悪い。
だがその反面、彼女の案は非常に効果的だ。
「氷菓ちゃんはこのままだとレート10、異端世界の存在になるわ。でもそれをこちら側の世界に召喚し、留める方法を有司はずっと前から知っているはず」
はっ、と氷菓が目を見開いた。流石にここまでヒントを出されば、察しの悪い有司でも気づく。聡明な氷菓なら尚更だ。
「『兵装化』……」
「その通り。有司の兵装コレクション、
「それにしたってもうちょっと言い方ってもんがあるだろうよ……」
有司は実姉のあんまりな物言いにがっくりと項垂れる。流石の有司でももう少しデリカシーのある発言ができる自信がある。ある……と思いたい。日頃の行いを鑑みるとちょっと怪しい。氷菓と交わした第一声とか特に。
これは所謂地雷を踏むというやつなのではあるまいか、と、内心で冷や汗を流してしまう。いかな理事長相手とは言え、発言次第では氷菓も激怒するだろう。
――そんな心配とは裏腹に、白銀の護衛の表情は真剣そのものだった。
「……私、なります」
氷菓はきっ、と顔を上げると、有司の金色になった瞳を、その青い目で真っ直ぐに見つめた。宿った光に冗談や強がりは一切見えない。何の迷いもない、彼女の決断がそこにあった。
「お、おい時凍」
思わず考え直せ、と口にしてしまいそうになる。それ以外に道は無いのだと分かっていても、なんというか、彼女に申し訳ないという気持ちが勝ってしまう。
有司が持つ、異端世界へと接続する力――《異法》とは似て非なる、兵装化の力……通称を《百装無神》。《大戦》期にはこの力を「無限の武器庫」と呼ぶ異端騎士もいたが、その形容はある意味では間違っている。
氷菓には以前、その内容を「異端世界から《異法》に関わらず兵装を持ってこれる力」だと説明したが、それは正確ではない。《百装無神》の真の権能とは、つまるところ「異端世界の隷属化」である。
有司は異端世界のありとあらゆる概念に対し、それを掌握し、服従させ、「汝に神たる資格無し」とラベルを貼り付けることができる。自分を他の誰よりも強いと特別視する凡百の異端騎士よりもよほど罪深いその『王権』こそが、バアル=アスタナトライが「百の兵装」を司る剣の神、異端者たちの『王』として君臨できた理由だ。
つまるところ有司は、異端世界に所属するものであればなんであれ、それを「自分の操る異端兵装」という殻に貶めることができるのだ。
例えそれが、主を持たない《異法》であったとしても。
あるいは、あらゆる異端世界を渡る、黒き金木犀の女神であったとしても、
殻に押し込められて存在する以上、その生存権や行動権の一切は有司に支配されることになる。《百装無神》が『兵装コレクション』と揶揄されるのも、なんら間違った例えではない。文字通りの所有物になってしまうからだ。
氷菓が自分を《百装無神》に登録された異端兵装にする、ということは、彼女のこれから先の人生を、全て有司に捧げる、ということを意味するのだ。
「無理する必要はないのよ? 選択肢は事実上唯一だけど」
「だからそういう風に半強制的なルート作るの止めろよ……!」
怒っても仕方のないことなのだとは理解している。美有はあくまで、最も効率的かつ効果的な選択肢を提示しているだけだ。
だとしても有司には、氷菓に兵装化の道を薦めることが、どうしてもできそうになかった。
出会ったばかりの同年代の少女に、俺のために未来を全部使え、と告げることは、できなかった。
だってそれは、今しがた彼女が肯定してくれた自分の過去に、逆らうような行為だったから。異端を正統にするために戦っていたのに……この力はその真逆、『正統を異端に貶める』力なのだから。
「強制されたからじゃありません」
けれど時凍氷菓は、そう言い切って見せた。
「さっき言ったばかりのはずですよ。あなたのこれから先の選択、全てを共に選ぶ、と。それなら、私の未来なんて、とっくにあなたに捧げているも同然です」
意志の強い少女だ。素直で、優しくて、そして信じた事柄をずっと信じ続ける、そういう子なのだろう。
まだまだ知らないことが沢山ある。彼女もまだ、自分のことを良く知らないはずだ。そんな間柄の二人の間に、生涯を共にするような契約を結ぶのはおかしい気もする。まだ早い気が、どうしてもする。
けれども。
「……それに、私……その」
彼女は、俯きながら、少し恥ずかしそうにはにかんで。
「お二人の輪に、私も加えてほしい、と、今日一日、ずっと思っていて」
そんなことは、これから知っていけばよいのだと、力強く宣言してくれたのだった。
ここまで言われてしまっては、とやかく言うような場面ではないようにも思う。
というよりそもそも他に道は無いのだから、最初からそんなことを言っている場合ではなかったようにも思うが。
要するに気分の問題だ。こういう重要なことは、お互いの同意がはっきりした状態で決めたい。まぁ、一種の儀式の様なものである。
氷菓の身体は、もう二の腕ほどまで消えかけている。時間が無い。最後の確認といこう。
「……後悔、ないんだよな?」
「ええ」
『本当にいいの? 兄様、私が言うのもなんだけどこんなのだよ?』
「こんなのとはなんだ、こんなのとは」
「素敵なところくらい、これから探します。舞花ちゃんは、いっぱい知っているのでしょう? だったら安心です。絶対にある、ということですから」
『むう。それを言われると』
舞花が唸る。今は斬馬刀の姿をしているが、いつもの人間態であったのならば、眉根を寄せていたことだろう。もっとも、似非ポーカーフェイスのせいで付き合いの長い者でもなければ分からない変化だろうが。
そんな妹の姿を想像して苦笑しながら。
「生きるために仕方なく、でしていい選択じゃないんだぞ?」
有司は、儀式の目指す地点を告げる。
そうとも。結局のところ、有司の懸念はこれに終始するのだ。
有司の《百装無神》。その支配は絶対的であり、かつ恒久的だ。舞花を見るが良い。彼女は本来の姿、力を封じられて、真紅の斬馬刀あるいは黒髪少女の姿をしているが、それを自分から脱ぎ捨て、異端世界の『神』に戻ることは不可能だ。それは彼女が有司との間に交わした契約のせいであり、即ちは《百装無神》の拘束力の証明である。
例えありとあらゆる異端世界にアクセスし、その《異法》を自在に引き出す力を持っていたとしても、剣の神王、その縛鎖からは逃れられない。
時凍氷菓は、どんな手を使っても、三橋有司とは切り離せない存在になってしまうのである。
齢十五の少女に取らせていい選択ではないことなど、重々承知している。
本当にこの道を選んでくれるのであれば、あとから文句を言うようなことなどしてほしくはないのだ。それだけの重みを、この契約に持ってほしいのだ。
その重圧があればこそ――自分も、氷菓の命を、何をかけてでも預かってみせようと、心に誓うことができるから。
その内心を、しっかり読み取ってくれたのか。
氷菓は、安心させるように、ふわり、と。雪の精霊のような、愛らしい、余りにも愛らしい笑顔を浮かべて。
「構いません。私は、私自身の気持ちで、この選択をします」
そう言ったはずだ、と。もう一度、宣誓したのだった。
「《第三最大異端》――いいえ、三橋有司。私を、あなたの
まだ誰にも踏まれていない雪野原のような、無垢で可憐なその微笑みが、有司の心を激しく揺さぶってくる。全身の血液が沸騰しそうだ。こんなことを言われたことが、十六年の人生で一階でもあっただろうか? いいやあるわけもないし、多分これからもない。
歯の浮く様な返しでも言えれば完璧なのだろうが、有司にできるのは、ただ戸惑いと羞恥の内に明後日の方向を見ることだけだった。
「畜生なんだこれ、言われてる側なのに超恥ずかしいんですけど」
「ふふっ、まるで愛の告白ね」
「なっ、わ、私はそんなつもりで言ったのでは……」
氷菓は林檎のように赤面すると、あたふたと首を振った後。
「……少しは、あるかもしれません……」
少しだけ俯いて、そう呟いた。
「え」
『は?』
破壊力が高すぎて半自動的にフリーズしてしまう。耳に届いた舞花の声が、これ以上ないほどドスの効いたものでなかったら、そのままずっと停止していたかもしれない。
「……肯定、してくれますか? それとも、こんな私は、嫌ですか?」
「……ああもうっ!!」
有司はがしがしと頭を掻きむしる。
上目遣いの氷菓の反応が凶悪過ぎた。この娘、一体自分が何を言って、どんな姿で有司に接しているのか理解しているのだろうか。いいや絶対に理解しているはずがない。変な男に騙されないか大変心配……いや、この場合の変な男とは自分自身ではあるまいか?
大体魅力的に過ぎるのだ、この少女は。有司が良心の欠片もないようなクズ男であったのならば――そもそも今の時点で若干その気配はある、という話は今は忘れることとしても――氷菓が、「あなたの所有物になる」、などと言い出した暁には、色々と抑えが効かなくなるような気がしてならない。
「変な事するかもしれねぇぞ」
「するんですか?」
「馬鹿、モノの例えに決まってんだろ」
くすくすと笑う氷菓。どうやら、お見通しのようである。
煩悶とした感情を形に変えることが出来なくて、有司は前髪を弄る。少女の青い瞳を、真正面から見据えることは、残念ながら恥ずかしくてできなかった。
けれど彼女の願いは、しっかりと受け止められた……と思う。そう思いたい。
「断る理由なんてあるかよ。その、なんだ……よろしく頼む」
「はい、ご主人様」
「その呼び方は流石にやめてくれ! 俺がやばいやつみたいじゃねぇか!!」
たった今そういう方面の事はしないと宣言したばかりではないか。自分から前提を崩しにくるのはやめて頂きたい。
またおかしそうに笑って、冗談です、と氷菓は応える。まったく、この新しい契約者はどうにも内心が読みにくい。変に生真面目なせいで、どこまでが本気なのかさっぱりわからない。
可能ならば、そういう認識格差を、これから埋めていければ幸いだ。
そんなことを思っていると、氷菓が再び口を開いた。
「では、先輩、と」
「また随分方向性が変わったな」
「だって、言っていたじゃないですか。たまには『先輩』に任せておけ、って」
「あー……」
そういえば、そんなことを言ったような気もする。まぁ確かにおかしな呼び方ではない。一応有司は彼女より一歳年上のはずだし、異端騎士としての経験も有司の方が長い。
これまでの《第三最大異端》としての活動のせいで、まともに学校生活というものを経験したことのない有司からしてみれば、随分とこそばゆいというか、妙に気恥しい呼称ではあったが……うん、ご主人様よりは数百倍マシなはずだ。
「……わかったよ。じゃぁそれで」
「末永く、よろしくお願いします、先輩」
これから先、ことあるごとに彼女の笑顔には調子を狂わされそうである。やっぱり可愛い女の子というのはそれだけでずるい。だって、ただ笑っているだけでこんなに心を乱してくるのだから。
有司はもう半分近くが異端生命体へと変換されつつある氷菓へと向き直った。彼女の熱く火照った、半透明の右手を執る。きゅっ、とそれを握りしめれば、氷菓の口から存外に甘い吐息が漏れた。なんだ、彼女の方も恥ずかしいのだ、と思うと気が抜けた。うん、失敗はしなさそうである。
これから、舞花にかけているような封印を、いくつも彼女にかけていく。それらが全て定着したなら、晴れて契約は完了だ。
『むぅぅぅ……ライバル的対立が決定的となってしまった……』
「これからは努力していかないと、
『誰のアイデアのせいなのかを考えない発言は姉様の悪い癖』
ぷくう、と頬を膨らませる姿が容易に想像できる。
『大体、兄様と契約したら最後、いろんな意味で二度と離れられなくなる。生命維持は当然として、
そんな妹の声を聞きながら、有司は氷菓の細い体躯を『書き換えていく』。
「っぁ……せん、ぱいっ……これ……ぇっ……!」
「悪い、我慢してくれ」
自分の体の組織が切り替わっていくのは、まぁどう考えても気分的にあまりよろしいものではあるまい。ただでさえ、肉体の消滅という恐怖と隣り合わせでの儀式なのだ。
あの舞花、それこそ当時は人間の感覚・感情など知る由もなかった舞花でさえ、表情を大きく歪めて苦しんだ契約儀式なのだ。
「そう、ではなくてっ、ですね……っ!」
しかし氷菓は、いやいやをするように力なく首を振って否定する。その頬が、見る見るうちに苦痛とは別の感覚に紅潮していく。吐息は荒く、それでいて甘く。熱に浮かされたように、青い瞳がとろんとしてくる。
――あれ? なんかこれ違くね?
そう有司が気づいたところで、時すでに遅し。
「だめ、だめっ……ぁ、あ、ぁぁあああぁああああ――ッ!」
時凍氷菓の、年齢から考えれば異様なほど艶やかな悲鳴が理事長室に木霊して。
移り変わっていく。
成り代わっていく。
その日、時凍氷菓は人間ではなく、《第三最大異端》の神器へと進化した。なんの滞りもなく、完璧に。完全な想定内、文句なしの大成功である。
『そう、
「なんで強調したの……?」
後日三橋有司は、自分の《百装無神》が伴う書き換えの感覚が、苦しみとか痛みとかそういう不快感的な路線のものではないことを知った。具体的には快感とか、獣欲的サムシングの刺激とか、そういう方向性。
こちらは完全に想定外であった。
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