第37話 ん? 俺はお前の女じゃないぞ?


 ◇◇◇


「不合格!」

「くそっ!」


 どうやら最後の1人の試験が終わったようだ。

 それにしても最後の癖して不合格で終わるのかよ。せめて最後の1人ぐらい合格にしろよ。


 ちなみに今年の合格者は33人中10人。例年よりも若干少ない感じだ。


 というかお前ら俺よりもだいぶ楽なんだから合格しろよ。


「では皆さん、試験お疲れさまでした。これは私からの細やかなお礼です。1年間過ごした仲間たちと共に食べましょう!」

「「「おおーーーーっ!!!」」」



 受かった人も落ちた人も、みんな共に喜んでお肉を頬張る。ガヤガヤと騒いでいると後ろの草木の隙間を誰かがこちらに向かって歩いてくるような音が聞こえてきた。


「ようやく見つけたぞ……クソ聖女が……」


 お、おう……めっちゃ露骨に晒してきたな。

 だが、俺は聖女だ。こういう時の対応ぐらい知っている。


「ジンバー様もいかがですか?」


 普通に焼いたイノシシを差し出す。さすがにこんな公衆の面前で聖女様からの施しを受け取らないヤツは――――――



「……えっ?」



 ジンバーに差し出したはずのお肉が宙を舞い、地面に落ちた。

 予想外過ぎたその行動を見た俺は思わず一歩後ろに下がった。


 す、捨てた……? 聖女からの施しを? この男が……?



「騎士団長様よ。それは酷くないか? 仮にも聖女様相手だぞ? 捨てるなんて非常識にもほどがあるだろ。ティアだって驚いてるじゃねーか」

「貴様ごときにはわかるまい! この私の深い憎しみが!」


 ジンバーは剣を引き抜き、俺を助けてくれたアラスに剣の先を向けた。


「悪いがお前にティアは殺らせない」


 アラスも剣を引き抜き、向けられていた剣を遠くに弾いてジンバーを後ろに遠ざける。


「ティア、俺の後ろにいろ」



 アラスは左手を伸ばして俺が前に出ないようにして、俺のことをチラッと見た。

 ……ん? もしかして、俺はコイツに守られてるのか?


『ん? そうじゃないの? まあ、相手は王国軍の騎士団長なんだし、ここはお言葉に甘えてたら?』


 それもそうだな。でも勝手に死なれてしまうのも困るし、少しぐらいはお手伝いをしてやりますか。


「【世界の加護ガイア】」


 俺はアラスに防御力を上げる魔法を付与する。この魔法は付与される人の防御力に依存するが、彼が異世界人だというのなら相当な効力を発揮するだろう。

 

「いいだろう。貴様も纏めて始末してやる。ゆくぞ、勇敢で憐れな少年よ!」

「来いっ! 騎士団長っ! 俺の女に手だしはさせねぇぞっ!!!」


「「うおおおおおおおおっ!!!」」



 二人の剣が勢いよくぶつかった――――








 ――――――1つだけ言わせてくれ。




 俺、お前の女になった記憶ないぞ?





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