異世界メイドを拾ってしまった

冴えないkitoki

プロローグ

会社からの帰り、俺の住んでいる一軒家の前でウロウロしている人物を遠目で見つけた。

不審者か?と思い、いやいやそれは無いなと瞬時に思った。

何故なら俺の住んでいる一軒家は比較的大通りに面しており、更に住宅地だ。そんなところで犯罪するアホはいないだろう。

しかし一応、警戒心を出しながら恐る恐る近づいてみる。

顔が見える距離までと近づくとそこには、どう見ても15歳程度の銀髪の少女がそこに居た。

銀髪のこの冬の季節に似合うショートカットに、まるでガラス細工のような瞳。

控えめに言ってかなり美人だった。そんあ美人が家の前でウロウロしている。どういうシチュエーションだ。

まあ、だからといって俺は24歳だし、なんとも思わんし、声を掛けようとも思わない。

待て。というか、今夜遅いはずだが・・・

時計を確認してみると、もう11時を回っていた。学生が出歩くには遅すぎる。

しかも少女は不良といった感じでもない。家出でもしたか?

少女の服装を何気なく見てみる。すると俺は衝撃を受けた。少女が着ていたのは制服などではなく、完全なメイド服。異世界のメイドが着そうなベタ過ぎるメイド服。何の変哲もないメイド服。

いや、こんな都会の大通りでメイド服を着ている時点で変哲はあるだろ、一人ボケ突っ込みをしている場合じゃない。その間も少女はずっとボーっとしている。

さあ、この少女をどうしたものか・・・

俺には選択肢がある。

一つ目は放置。見知らぬふりして帰って寝る。これは、流石に酷いか。少女はメイド服を着ているが、今の季節は冬真っ只中。これで凍死でもされたら寝覚めが悪いどころじゃない。

二つ目は、声を掛ける。これが最も優しい判断なのだろうが、警察に近所の人が通報したら、たまったもんじゃない。

でもなあ・・・

冬空を見上げながら考えた結果、声を掛けることにした。前言撤回。どうか通報されませんように。

俺は、ずっと挙動不審にウロウロしている少女に話しかけてみる。

「ねえ、君どうした?」

「・・・・」

少女はこっちに気付くなり、何とも言えない微妙な顔をした。

これは警戒されているのか?

「俺は怪しい人じゃないぞ」

「・・・・」

なおも無言。というか、今の俺犯罪者の台詞っぽすぎだろ。

「な、何でここにいるんだ?この家に用事?」

「・・・分かりません。急に異世界から来たので」

・・・・・は?

予想外の答えが来た。

異世界って単語が聞こえた気がしたが・・・気のせいだよな。

気のせいであって欲しい。

「何て?」

「異世界から来てしまったんです」

聞き間違えじゃないようだ。

どこかバツが悪そうに言う少女。というか、全然何を言っているのか分らん。

俺は24歳にしては、結構オタク文化に詳しいが・・・

流石に自分を異世界から来たっていう人は初めて見た。

もしかして、リアル中二病少女か。

「こんな遅い時間にどうした?君学生だろ?」

取り敢えず話題転換。

「学生?馬鹿にしないでください。少なくともあなたよりは上ですよ」

・・・何だコイツは。まともに会話をする気がないのか。

「分かった分かった。今からどこへ行こうとしてたんだ?」

「・・・・・」

無言。段々イライラしてきた。落ち着け俺。相手は学生だぞ。

もう放っておこうかな・・・とか大人げないことを考えていると、ふと少女の顔に違和感を覚えた。

少女の顔を凝視するとその違和感は確証に変わった。

少女の頬には暴力でつけられたであろう、痣があった。明らかに人為的。

メイド服で腕が出ているから分かったが、腕にも同様の痣が。

それに、寒い様子を見せなかったから気付かなかったが、手は相当かじかんでいる。

流石にこれはダメだ。会ったばかりだし何も知らないが、取り敢えずこの少女が相当まずい状況下に居ることだけは分かる。結構イラついていたがそれはこの際問題じゃない。

だったら・・・

「おい、寒いだろ。取り敢えず家入れよ」

「・・・・へ?」

少女はアホみたいな声を出した。

「俺は怪しくは無いって言っても信じられねえだろうからお前が決めてくれ」

俺は玄関の鍵を開け、中に入る。

「鍵は開けておく。入りたかったら入れよ」

半分体を外に出しながらそう言った。

結局のところ俺は何もする気は無いが、少女の判断に委ねる他無いだろう。

俺がタンスの近くでスーツを脱いでいると、扉が開いた気配がした。

はぁ、俺もアホだな。


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異世界メイドを拾ってしまった 冴えないkitoki @kai_tunndere

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