第14話 小さニャ恋のうた

「君は百〜合な〜んか読まないとおもい•な•が•ら〜」

 -モミモミモミモミ-

(すごい機嫌がイイ)

 今日はイチャラブ系の百合小説読んでる…。

 と。


「さっき、繭ちゃんと会ってきたのよ」

(あっ)

 揉んでる途中でひょいと体を抱き上げられた。

「本当はね」

 キラキラした花の瞳がそこにはあった。

「もう一度、『城咲さんには桜井さんがお似合い』って言おうとしてたの」

「ニャー」

「でも、言わなかったの。どうしてだと思う?」

「ニャー(どうして?)」

「言っちゃダメって、繭ちゃんに言われたの」

「ニャッ」

「言葉にしてないの。けどわかったのよ。その言葉を言ったら怒るからねって。ずっとずっと『好き』の狭間で言ってたの、彼女」

「ニャー」

「だからね、やめた。それにきっと桜井さんにも失礼だと思ったのよ」

「ニャー(そうだね)」

「せっかく若返ったんだもの。ちゃんと繭ちゃんと向き合って恋をしてみるわ」

「ニャー」

「さっき、初めて手を握っちゃったの。すっごくドキドキしちゃった」

「ニャー(私もだよ)」

「だからね、次は、名前……下の名前で呼んでみるのに挑戦しようかなって。告白の時以来あまり呼べてないの」

「ニャー」

「あー、夢みたい。でも緊張しちゃう」

 花は、ももを胸に優しく抱きしめた。

「じゃ、ももちゃん寝ましょうか」

「ニャッ」

 -パチッ-

 電気が消された。


(もおー)

 するりと花の腕からのがれて、ゆっくりと胸に頰を乗せてみた。

 ほら。

 全然しっくりいかないじゃん。

 -ぐいっ-

 肉球で押してみた。

 弾き返された。

(………危ないから、もういいや)

 花から離れて、一応自分用に用意されたベッドに潜り込んだ。




 -ピピピピ-

 -ピピピピ-

「わっ、やば」

 時計が5時10分を指していた。

 猫窓から自分の部屋に戻る時間をとっくに過ぎていた。

 当然ながら繭は素っ裸だ。

(仕方ない。これで)

 猫用ベッドで隠して立ち上がった。

 花はまだ、布団でもぞもぞしている。

(ギリギリセーフ)

 そう心で叫んで、花の部屋を出た。

 時だった。


「…えっ、繭……?」

「あっ」

 そこに立っていたのは。

 マシューだった。

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