第7話 ニャンでそーなるの

 -モミモミモミモミモミモミ-

「この山賊の七緒がクールでカッコいいのよねー」

「ニャー」

 最近、しぶしぶガラケーを卒業した花ちゃん。

 しばらくはあたふたしていたけれど。でも、やっぱり20歳に若返っているからだろうか。思った以上にすんなり使いこなして、ケータイ小説を読むのが寝る前の日課になっていた。

 今は百合か歴史モノにハマっている。


 私はと言えば。

 5時前後で猫に戻るのが流石にキツくなり、再度、王様にお願いに行った。


「王様。もう少し、人間に戻る時間を遅くして頂きたいのです」

「いいだろう。但し、引き続き行いを正しこれまで以上に善を積め」


 こうして、夜9時前後に猫に戻り、早朝5時ごろ人間の繭に戻る、という体を私は手に入れた。

 しかし。

 ただ一つ困ったことが…。

 そう。

 花ちゃんと一緒に寝ているから、全裸で繭の姿にいきなり戻ってしまうと大ピンチなのだ。

 だから、私は4時半には起床して、ドアに作ってもらった猫窓から出て行き繭の部屋へ戻る。


 ちょっと苦しいけど、

「何かね、時々ももちゃんが私の部屋のドアを引っ掻くの。音をたてられるぐらいだったらウチにも猫窓作って自由に出入りしてもらったほうが、いちいちドアを開けに行かなくて良いから」

 という理由を言い、私の部屋のドアにも猫窓を作ってもらった。



 モミモミモミ……。

 ふう。

 こんなもんだろ。

 今日は花ちゃんの方を向いて、おっぱいに頰を乗せた。


(……美人さんだよね)

 真剣に小説を読んでいる花ちゃんの横顔は、大正、昭和の映画女優のような美しさを漂わせている。

 二重だけど、パッチリとした二重ではなくどちらかといえば奥二重で目もさほど大きくない。

 でも、小さくて紅い唇と白いスベスベした肌が、香り立つような美しさをまとっていた。


「ニャー」

「あ。明るい? ごめんね、もうちょっとで終わるから」

 私はぐいっと、顔を上げてケータイを覗き込む。

七緒山賊か……)

 カッコいい系の女の子が好きなのかなあ。

 そういえば繭もクール系だよね。まあ、あんまり人間の生活くらしに慣れていなかったから、無駄に喋らなかったってだけなんだけど。


 ケータイを文机の上へ置いて、

「ごめんね。じゃ、寝よっか」

 電気を消した。


 その時だった。

「ももちゃん、もう少しあっち行って」

「ニャッ⁉︎」

 冷たく花ちゃんの手が私の体を掴むと、ずりずりとズラした。

「ごめんね。ももちゃんのこと嫌いになった訳じゃないの。でも……」

「ニャー(でも⁉︎)」

「でも、でも、ももちゃん、繭ちゃんの香りがするんだもの!」


 そう言って。

 花ちゃんは、向こうを向いてしまった。

「ニャー(うそーお)」

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