ココロを殺す

D-JACKS

第1話 

普通というのは、誰もが当たり前だと思っているがとても素晴らしいことだと俺は思う。

快適に暮らせる家があること、学校に行けること、ご飯を食べれること、なんの問題もなく1日を過ごせること、どれもが毎日のようにできているからみんなは何も思わないかもしれない。

だけど俺はそんな当たり前がとてもありがたいことだと思っている。

家があるのは誰かが家を建ててくれて親が家賃、光熱費などを払ってくれているから、ご飯を食べれるのは、誰かがご飯を作ってくれるから。

なんの問題もなく暮らせているのは、自分の知らない誰かや家族によって自分は支えられているからだ。


そう思うと、普通の日常が送れるということはありがたいであり、むしろ普通の日常を大事にすべきだと思う。

いつも通りの日常を退屈と感じるかもしれないが、刺激的な出来事は何気ない日常が繰り返されているから初めて刺激的と感じるのだ。

つまり、俺が何を言いたいかというと、俺は普通な日常に感謝しているということである。

むしろ毎日が普通でいいと思っている。普通な日常を気の向くままに生きることが俺は好きだ。


そんな普通を愛する俺は普通科高校に通う高校2年生。

どこにでもいるただの高校生だ。

勉強やスポーツがとりわけできるわけでもないが、毎日を楽しく送っている。

友達はたくさんはいないが、学校では孤立しない程度には友達がいて、学校生活も充実している。

足りないものがあるとすれば、人生の目標がないことくらいだ。

高校生にもなると、社会というものを意識し始める年頃だが、俺は何も考えていない。

適当な企業に就職して、生活できるだけのお金を稼げいでいければ十分だと思っている。

そう、俺は普通を愛するが故に、欲があまりない。

1日問題なく過ごせるだけで充分なのだ。

そんなことを登校中に考えていると後ろから声が聞こえてきた。


「おはよー悠弥!!今日もボケっとしてるね!!」


俺に声をかけてきたヤツは真衣。

俺の家の近所に住んでいて、同じ高校に通っている。

いわゆる幼馴染だ。


「おはよう。お前はいつも朝からテンション高いな。どこから出るんだよその元気は。」


「そんなの、朝ご飯以外になくない?悠弥はバカだなー」


朝ご飯を食べればハイテンションになれるのは常識なのか?だったら朝の電車の中はお祭り騒ぎで大変なことになってしまうではないか。

けれど、電車の中はとても静かな事を考えると朝ご飯でテンションをチャージできるのは一部の人間だけなのかもしれない。

そもそもテンションってチャージ制なのか?そんなスマホみたいに「テンション切れたから飯食ってくるわー」みたいな感じなのだろうか。


「何またぼーっとしてるの?もしかして朝ご飯食べてないの?ダメだよーご飯食べないと。」


「ご飯は食ったよ。ちょっと考え事してただけ。」


くだらないことを考えていたら結構時間が経っていたみたいだ。


「ふーーーーん。あっ、そういえば数学の宿題やった?」


「やったよ。・・・言っとくけど、見せないからな?」


真衣が俺に宿題の話をするときは必ず真衣は宿題をやってない。

俺の答えを見ようとする。


「いいじゃんかー別に減るもんでもないしさ」


「自分でやるから意味があるんだろ。部活が忙しいのもわかるけど、宿題くらいはちゃんとやれよな。」


真衣は陸上部に所属している。

真衣は陸上部の中では成績がいい方で、部活に時間を割いているから、学校の宿題をやってないことが多い。

だからといって学校の成績が悪いわけでもない。

むしろ真衣は学校の成績は俺よりもいい方だ。

部活をやっているから普段はあまり勉強をしないが、部活がなくなるテスト週刊で一気に勉強をして、テストでは高得点を出すやつだ。

部活に入らずコツコツと勉強してる俺よりテストではいい点を出すものだから、少しだけ腹が立つヤツだ。


「はいはい~わかりましたよ~」


本当にわかっているのだろうか。

こいつのことだからほかの友達に見せてもらうのだろう。

真衣は友達も多いのだ。

常にハイテンションな真衣はいろんな人と仲良くなる。

勉強も運動もできて、さらに友達も多いという、高校生のヒエラルキーのトップにいるようなヤツだ。

同じ環境で育ったのに、ここまで能力に差が開くとは思わなかったなあ。

まあ、俺は俺で楽しく生活できてるからそれでいいけど。


その後もくだらない会話をしながら登校し、いつも通りの学校生活を過ごしていく。

学校でも何事もなく過ごし、放課後になった。

帰る準備をしているときに


「悠弥~いっしょに帰ろうよ~~」


真衣が声をかけてきた。


「お前、部活は?」


「今日は顧問の先生が出張で休みなんだ~。だから早く帰ろう!!」


断る理由がなかったから俺は真衣と一緒に帰ることにした。

下校中も登校と同じように何でもない会話をしながら歩いていた。

その後も何事もなく俺たちはそれぞれの家へと帰った。


これが俺が愛する普通の生活である。

普通にご飯を食べて、普通に友達と過ごし、何事もなく1日を過ごす事ができる毎日。

それが俺の愛する普通である。

こんな毎日がずっと続くことが俺の望むことであり、ある意味人生の目標なのかもしれない。



しかし、俺の願いとは裏腹に俺の日常は普通とはかけ離れていくのである。

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