ショービジネス

水谷一志

第1話 ショービジネス

ここはショービジネスの本場、アメリカ合衆国。

そして俺は、そんなビジネスの最前線にいる…のか?


俺の《取り巻き》たちがけたたましい音を立てている。

そしてその周りには、大勢の熱狂したヤツら。

これはざっと見て…、数万人はいるだろう。


そう、何せここは本場のアメリカだ。

しかし、俺には国籍なんて関係ない。

そう、この国は大勢の、国籍なんて関係ないヤツらでできあがっているのだ。

夢と成功の国、USAで国籍なんてどうでもいい。


あと、俺は仲間の中でも成功した方かもしれない。

世の中は大量生産・大量消費の時代。

俺の仲間なんてこの国には腐るほどいて、腐るほど成功を夢見ている。

いや、中には「俺は大きな成功なんて望まない。でも小さな子どもたちに喜んでもらいたい。」というヤツもいたな…。

それは、きれいごとなのか?

そんな思いも抱えて、俺はこの場所にいる。


また、仲間にはフランスで成功しているヤツもいるな…。

あそこはお国柄が全然違う。

まあそいつも俺とは全く違う雰囲気で、「仲間」と言えるかも怪しいが。

でも、広い意味で捉えれば、おんなじ需要と言えるだろう。

ちょっと広い意味で捉えすぎかもしれねえが。


そう、俺の存在は今やみんなの憧れ。

しかし俺はふと思うことがある。

…本当に、みんなは俺に憧れているのか?

そう考えると、何だか虚しくならなくもない。


まあ俺は目立つ存在になった。

しかし俺は主役ではないのではないか?

確かに俺は人目に触れる。そうその通り。

しかし俺目当てで熱狂しているヤツは本当にいるのか?

これは難しい問題だ。

俺は確かにこの国の娯楽の一翼を担っている。

でも俺は本物の《スター》のお膳立てをしているに過ぎないのかもしれない。

…まあそれも立派な《ジョブ》かもしれねえが。


「今日のバンド演奏も最高でしたね!」

「さあ、今年の《スーパーボウル》、ハーフタイムショーが終わり、今からが後半戦です!」


数万人の観衆の注目を集める俺。

その数万人は…、何を見に来ているのか?

そもそも、娯楽とはいったい何なのか?

みんなの興味は千差万別で、だから俺の仲間もいろんな格好をしていて。

それらは全て《ショー》につながっている。

でも、《ショー》だけが、注目を集めることだけが全てではないであろう。

俺は《この場所》に立って、その思いに捕らわれる。

まあ、俺目当てでここに来たヤツは…いない?いやいるかもしれないが。


そして観客席にしれっと交ざっている俺。

ここから《スター》を眺めるのも、意外といいかもしれない。


十一

「QBの○○選手、ナイスパスですね!」

「さすがは大スターですね!」


十二

何々?俺はハーフタイムショーに出たロックバンドのメンバー?

それともQBをお膳立てするフットボールの選手?

どっちでもねえな!

俺は…、そんなフットボールの選手が着ている【ユニフォーム】だよ。  (終)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ショービジネス 水谷一志 @baker_km

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ