ショービジネス
水谷一志
第1話 ショービジネス
一
ここはショービジネスの本場、アメリカ合衆国。
そして俺は、そんなビジネスの最前線にいる…のか?
二
俺の《取り巻き》たちがけたたましい音を立てている。
そしてその周りには、大勢の熱狂したヤツら。
これはざっと見て…、数万人はいるだろう。
三
そう、何せここは本場のアメリカだ。
しかし、俺には国籍なんて関係ない。
そう、この国は大勢の、国籍なんて関係ないヤツらでできあがっているのだ。
夢と成功の国、USAで国籍なんてどうでもいい。
四
あと、俺は仲間の中でも成功した方かもしれない。
世の中は大量生産・大量消費の時代。
俺の仲間なんてこの国には腐るほどいて、腐るほど成功を夢見ている。
いや、中には「俺は大きな成功なんて望まない。でも小さな子どもたちに喜んでもらいたい。」というヤツもいたな…。
それは、きれいごとなのか?
そんな思いも抱えて、俺はこの場所にいる。
五
また、仲間にはフランスで成功しているヤツもいるな…。
あそこはお国柄が全然違う。
まあそいつも俺とは全く違う雰囲気で、「仲間」と言えるかも怪しいが。
でも、広い意味で捉えれば、おんなじ需要と言えるだろう。
ちょっと広い意味で捉えすぎかもしれねえが。
六
そう、俺の存在は今やみんなの憧れ。
しかし俺はふと思うことがある。
…本当に、みんなは俺に憧れているのか?
そう考えると、何だか虚しくならなくもない。
七
まあ俺は目立つ存在になった。
しかし俺は主役ではないのではないか?
確かに俺は人目に触れる。そうその通り。
しかし俺目当てで熱狂しているヤツは本当にいるのか?
これは難しい問題だ。
俺は確かにこの国の娯楽の一翼を担っている。
でも俺は本物の《スター》のお膳立てをしているに過ぎないのかもしれない。
…まあそれも立派な《ジョブ》かもしれねえが。
八
「今日のバンド演奏も最高でしたね!」
「さあ、今年の《スーパーボウル》、ハーフタイムショーが終わり、今からが後半戦です!」
九
数万人の観衆の注目を集める俺。
その数万人は…、何を見に来ているのか?
そもそも、娯楽とはいったい何なのか?
みんなの興味は千差万別で、だから俺の仲間もいろんな格好をしていて。
それらは全て《ショー》につながっている。
でも、《ショー》だけが、注目を集めることだけが全てではないであろう。
俺は《この場所》に立って、その思いに捕らわれる。
まあ、俺目当てでここに来たヤツは…いない?いやいるかもしれないが。
十
そして観客席にしれっと交ざっている俺。
ここから《スター》を眺めるのも、意外といいかもしれない。
十一
「QBの○○選手、ナイスパスですね!」
「さすがは大スターですね!」
十二
何々?俺はハーフタイムショーに出たロックバンドのメンバー?
それともQBをお膳立てするフットボールの選手?
どっちでもねえな!
俺は…、そんなフットボールの選手が着ている【ユニフォーム】だよ。 (終)
ショービジネス 水谷一志 @baker_km
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