22.調査結果

*時は遡り数日前*



「殿下、お手紙が届いてるよ」



「ありがとうアラン。ん?誰からだ」



封筒を受け取り、差出人の名前を見るが、そこに書かれた名前に心当たりはない。



王宮に送られてくる手紙は全て検閲しているため、怪しい者からではないことは明らかなのだが、名前を見る限り女性からで、普段から様々な女性に付きまとわれているジルベルトからすれば良いイメージは持てない。



「…殿下、その女性の名前、本当に聞いたことがないの?」



「私が知っている人か?」



アランはため息をついた。

自分の乳母兄弟はどうしてこんなにも他人に興味を持てないのか。記憶力もいいし優秀なのに、政治に関わるか本人が興味を持たない限り女性の名前は覚えられない。



「クローディア嬢のメイドだよ。いつもクローディア嬢の隣にいるのに覚えてないの?」



「クローディアのか!思い出した、水色の目をしたメイドだ!」



「…珍しく思い出せたようで何よりだけど、もう少しましな覚え方はなかったのか…」



封筒をあけ、中身を取り出す。



「にしてもどうしてわざわざメイドが手紙なんて…」



そう言いながら綴られた文字に目を通していくうちに、ジルベルトの顔は険しくなっていった。



「…アラン」



「なに、ジルベルト」



「最近、クローディアの様子がおかしかったこと、気づいていたか」



「いや…特には…。俺とクローディア嬢はクラスも違うし接点がないから…」



「クローディアが怪我をしたらしい」



「へぇ、珍しい。淑女の鑑みたいなクローディア嬢が怪我ですか」



まぁ、どうせ少し掠っただけ、とかそんなだろうな、貴族令嬢って言うのはいつも大袈裟で…なんて考えていたアランはジルベルトの言葉の続きを聞いて固まった。



「顔に複数の切り傷、ガラスの破片に香水を被っていた…。」



瞬時に真剣な表情になる。



「…ジルベルト、それは…」



「クローディア曰く、枝で切って香水は自分でかけたそうだ」



「クローディア嬢に限ってありえないな」



「アラン、以前頼んだ学園でのクローディアの生活の調査、どうなってる」



ジルベルトはクローディアの様子がどことなくおかしい事に気づいてから、学園での様子を調べろという趣旨の命令を出していた。



「特に異常はなかったはず…」



アランが調べた情報は、一見特におかしい点は見当たらなかった。



「クローディア嬢は、初日での魔法テストも普通にこなして、授業も教科書を全て覚えて受けているって…。仲が良さそうな友達もできてたし、変なところは…」



「メイドからの手紙によると、クローディアは教科書の再購入をしている。覚えて自分の意思で持ってこない教科書なら、なんで買う必要がある?」



「まさか…」



「クローディアは賢い。お前の話に普通なら違和感はない。クローディアなら教科書くらい覚えてもおかしくない、という認識があっても変ではない」



「でもクローディア嬢にそんな様子は…」



「誰にも言ってないんだろうな。幼い頃から共いるメイドにも嘘を伝えるほどだ、自分が耐えれば大丈夫なんて思ってなければいいが…」



アランは唇を噛む。

ジルベルトに調査を頼まれながら、伝えられた情報だけで異常はないと判断してしまった。自分の未熟さに嫌でも気づいてしまい、悔しくなる。



「でもジルベルト、どうするんだ。学園は王の力であろうと介入はできない。クローディア嬢に嫌がらせをしている生徒たちをどうやって処罰するんだ」



ジルベルトは少し考えた。



まだ何も証拠もない状況では、何も出来ない。



―――なにか証拠を掴まないと。














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