4.えっ!?

「ちょっと、どういう事!?」




翌朝一番に届いた殿下からの手紙を読んだ私の叫びが公爵邸に響いた。


そこには長々と殿下の美しい文字で色々書いてあり、要約すると、




『クローディア、君が望む婚約破棄は了承しかねる。やはりまだ体調が悪いのではないか?君にしては珍しくおかしなことを言うようだね。きっとまだ熱があるのだろう。倒れた君はかなり高い熱があったからね。もう少し体調が良くなってからもう一度考えてみてくれ。ひとつ忘れないで欲しいことがあるのだが、君以上に私の婚約者にふさわしい令嬢はいないんだ。代わりの者なんてみつけようと思ったら一生あっても足りない。それだけはわかっておいてくれ。

PS.今日急遽スケジュールに空きができたんだ。午後、君の様子を見に行くが、出迎えなんて無理をせず大人しく寝て待っていてくれ』




要約になったのかは不明だが、殿下が言うことはひとつ。



────婚約破棄は「しない」




「どうして…なんでよ。確かにまだ熱はあるけどそんな急に見舞いに来るなんて常識あるのかしら。というか何、わたくしの代わりを見つけるのに一生かかる?あなた今から2年以内に見つけるのよ」




────アイシャ様が転入してくる1年以内に婚約を破棄しないとまた殺されてしまう。どうにかして婚約破棄をしなければ…




一人叫んだり呻いたりしているクローディアを奇異の目で見る使用人たちだった。





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

クローディアの手紙を受け取った殿下

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「おいアラン!なぜ見舞い直後に婚約破棄を申し出られるんだ!?私は何か悪いことでもしたのか!?」



「殿下、嫌われてるんじゃないですかー?」



「…きら…われてる?クローディアに…?」



「はい。男である殿下には乙女心なんて分からないでしょうから」



「…それはお前も同じだろう」



「とりあえず殿下が今までしちゃった嫌われちゃったかもしれない行動を纏めてみましょう」



「あ、あぁ…」




「まずひとつ。殿下はクローディア嬢が倒れた時壇上にいたにもかかわらず駆け寄って抱き上げて医務室に連れていきました」



「当たり前だ。婚約者だからな」



「この出来事、クローディア嬢は気にしていないように見えましたが、殿下が思う以上に貴族令嬢の世界は厳しいもの。いくら完璧な公爵令嬢だとしても殿下を慕っている令嬢達からは妬みの的となるでしょう。日頃から人形令嬢と陰口を言われているのですから余計に」



「だとしてもだ!婚約者が倒れたら誰が運ぶ?婚約者以外の異性には基本触れてはいけないのだから私以外にいなかっただろう」



「殿下、これが乙女心なんです。まぁ、分からないでしょうけど」



「…それはお前も…」



「そして2つ目、殿下、先程見舞いに行かれた時、可愛かったからなんて言う理由で頭なでなでしましたね」



「うっ…」



「俺が言うのなんですが、つい先日まで最低限の義務しか果たしてこなかった婚約者が急に甘やかしてくるのは」




「…くるのは?」




「…正直キモいです」




「ガバッ…」



ジルベルトのライフはゼロと化した。



「クローディア嬢との婚約、破棄しますか?」



「する訳ないだろう!」




「なら、誠心誠意彼女に向き合って、彼女から愛されないと」



愛される…



「アラン、わかっていると思うが言わせてくれ。彼女に感情があると思うか?」



「先程言ったじゃないですか。感情らしきものを感じたーって」



「違う違う、彼女に、人として、当たり前の感情、つまり愛なんて感情あると思うか!?」



「散々な言われようですね、クローディア嬢」



「あっ、悪く言うつもりはなかった。だが…ないだろう?」



「…ないですね」



「そんなクローディアに愛を求めるなんて。どんなに求めても返される未来が見えない」



ジルベルトの目には絶望がみえる。自分が愛を囁きまくり、全て無表情で返される未来がみえてしまうのだ。



「それでも殿下、諦めてもダメです。諦めからは何も成長しません」



侍従として、兄弟としてアランは強めに言った。



「そっそうだな!この手紙に私の思いをのせよう。アラン、今日の予定は?」




「みっちり詰まってます。…何するつもりですか?」



アランは嫌な予感がした。



「クローディアの見舞いだ」



「殿下、予定が…」



「全てキャンセルだ!私はクローディアに逢いに行く!」



「やめてください。俺が叱られる最悪な未来が見える。でもまぁ…少しくらいなら…」



「よし決定だ。早く手紙を書くぞ」





まぁ、その結果クローディアに警戒されるような変な手紙を書いたのだが。



逆行転生したクローディアには始業式での出来事など何ひとつとして覚えていないことを彼らは知らない。

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