プロローグ3
遠くで鳥のなく声が聞こえる爽やかな朝に、王宮に着いた私は国王陛下とお話されるため先に王宮にいらっしゃるお父様の元へ向かうため、歩みを進めていた。
「みて、クローディア公爵令嬢よ」
「あら、本当。すごくお綺麗な方ね」
「でも見て、表情が全くないわ。人形という噂は本当ですのね」
「あんなに愛想がないからお優しい殿下にさえ見捨てられるのよ」
「お前クローディア嬢と付き合いたかったんじゃなかったっけ?」
「冗談だろ、俺の好みは可愛らしくて優しい人なんだよ。誰が好んであんなに奴と…」
「こらっ!聞こえるだろ」
クスクスという笑い声とともにあちこちで私のことを噂する声が聞こえる。婚約破棄されるとこうなるのね、今まで皆様私によく話しかけてくださっていましたがやはり次期王太子妃という地位がそうさせていただけなのね。人間ってなんて薄情な生き物かしら、と歩いていると、
「クローディアさまぁ、おはよぅございますぅ」
…このまとわりつくような喋り方。アイシャ様ね。
「アイシャ様、ごきげんよう。本日はどうして王宮に?」
「えぇー、やだなぁ、私はぁ、王太子妃になるのよぉ?王宮にすんでぇ、当たり前だと思わないですかぁ?」
元婚約者のわたくしでさえ、王宮には住ませて頂けませんでした。と言っても未婚の女性が婚約者とは言え男性の家に住むというのは貴族社会ではありえないことです。大方この方の暴走で勝手に王宮に来たのでしょうけど。しかしこの方に何を言っても通じはしないのでしょう。
「アイシャ様はジルベルト殿下の婚約者になられたのですか?わたくしはまだ書類にサインしていないので、書類上はわたくしが婚約者のはずなのですが」
「そうですねぇ、今日が婚約者最後の日ですものねぇ、せいぜい楽しんでくださいねぇ」
「では失礼します」
こんな所で時間を食っている場合ではありません。颯爽とこの場を去ろうとすると
「ちょっとまってくださぁい、クローディアさまぁ」
「…まだ何か」
正直嫌な予感しかしない。
「わたしぃ、将来わたしの臣下になるクローディアさまとぉ、お茶したいなぁーって思ってぇ、今日の午後いいですよねぇ?」
臣下。子爵令嬢が我が国の筆頭公爵家、フィオレローズ家に何をいっているのかしら。
「あっ!ジルベルトさまぁー!」
ふっと振り返るともうすぐ婚約者で無くなるジルベルト殿下が私の後ろにいらっしゃった。
「わたしぃ、今日クローディアさまとぉ、お茶することになったんですぅ」
…は?わたくしはもちろん了承の返事なんてしていない。
「アイシャ様。それは「そうか、クローディア、アイシャと仲良くしてやってくれ」
「殿下、それは命令ですか?」
「何がだ?」
「わたくしがアイシャ様とお茶会をし、なかよくなれ、というのは命令でしょうか」
「そんなぁ、私はただクローディアさまとぉ、仲良くなりたいだけなんですぅ。命令されないとやってくれないなんて言わないでくださぃ」
だって。どう考えてもこの方と2人きりでお茶するのは嫌な予感しかしないのだもの。命令でない限り私に拒否権は存在する。というか今はまだ彼女は子爵令嬢。公爵令嬢にお願いをして突っぱねられるのはあたりまえといってもいい。
「アイシャ様とお茶をするなんて我がフィオレローズ家の品位を疑われかねないですわ。わたくしはお断りさせて頂きます」
キッパリと断った。が、しかし…
「そんなに言うのならクローディア、君がアイシャ嬢にマナーを教えてくれ。今日のお茶で」
これはつまり、参加しろ、という命令ですのね。
「…かしこまりました」
そう返事をすると、アイシャ様は一瞬ニャっとした笑みを浮かべたが、
「ありがとうございますぅ」
と言い去っていった。
たまたま居合わせる形になったが目的地は同じなのでわたくしは殿下と共に国王陛下の執務室にむかうことになった。
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