後天性ツインズ
城弾
第1話 『分裂』
五月。
たいていの高校の部活動では新入部員の勧誘も終わり、新体制に移っている。
そして「羽目を外す」のもこの石ノ森高校ではこの時期だった。
「むっ」
男性の声が響く。どうやらメール着信らしい。
それも彼らにかかわる。それはその場の最高位の椅子に座っている彼の表情から見当がつく。
「またかよ……」
つぶやいたのは巨漢。
195センチ。100キロ。詰襟の学生服が窮屈そうだ。色はグレー。
髪をべったり後ろになでつけているから老けて見えるが、高校二年生になったばかり。
端正な顔をゆがめて巨漢は「嫌そうな表情」をする。
「まったく……次から次へと色々やらかしやがって。まともな部活はないのか?」
「まぁそういうな。
生出と呼ばれた方と逆に髪の毛がとんがって逆立っている。
およそ「生徒会役員共」という雰囲気ではない。
「わかってるよ。佐田。けどこうも立て続けじゃたまったもんじゃない。忙しくて彼女も作れない」
比喩もあるが彼はどちらかというと「肉食系」だった。
フルネームは生出 理人(りひと)なのだが「リビドー」と揶揄されるほどである。
「そろそろいいかな?」
「はっ。
「総統」はあくまでも通称だ。ただしこの執行部の責任者ではある。
青白い顔をした彼は「きぃておどろけ!」と血管が切れそうな甲高い声で叫んだ。
「密告だ。オカルト研究会。通称『少年同盟』が妙な儀式を今夜行うらしい」
「少年同盟!? 風田の奴がかかわっているあそこか」
生出理人と因縁浅からぬ生徒。
その名を聞いたとたんに彼の表情に闘志があふれる。
「当然だが夜中の学校は締め切っている。不法侵入になるだろう。そこを押さえろ。むろん我々は話を通しておく」
「総統」は引き締まった表情で「執行部」の面々に告げる。
「特命。少年同盟の儀式を阻止せよ」
「了解」
夜八時。
オカルト研究会の部室では紫色に輝く石を囲むように6人の部員が着席していた。
ご丁寧に全員が覆面をかぶって怪しさ大爆発だった。
「これがどんな願いでもかなえると言う神秘の石?」
「とてもそうは……」
「いや。特撮で紫といえば強い以前にやばい奴と決まっているから、逆に説得力が」
「特撮なんかと一緒にするな」
「とにかくはじめよう。今夜は満月。時はそれ。後は祈りをささげるだけだ」
彼らは一心不乱に祈りをささげた。
だから「摘発」に気が付かなかった。
「そこまでだ!」
突如として扉があく。もちろん施錠してはあったが生出が怪力で力任せに扉を開けた。
「うわあっ。ガサ入れだぁっ」
逃げようとするが生出以下四名の「生徒会執行部」……またの名を「学園警察」が取り押さえる。
「まったく、下らんことばかりしおって」
生出はゆっくりと歩み寄り、魔方陣の中にあった「神秘の石」を握る。
「こいつは証拠として差し押さえる」
「ああっ。なんてことを」
「触るな。手を離せ」
「直接手で触るなんて……何が起きるかわからんぞ」
「少年同盟」一同が抗議する。しかし聞き入れない生出。
「やかましい。貴様らのつまらん『部活』のせいで、オレはこんな時間に学校にまで出張ってくる羽目になってんだぞ。少しは反省しろ」
ここで日頃の鬱屈が爆発した。
「まったく。おかげでこっちは彼女を作る暇すらない。それどころかプライベートタイムすらない。体が二つほしいくらいだ」
「神秘の石」を握りしめて力説する。
その石が強い光を放つ。
「な、何だ?」
生出はあわてて離そうとするが石が手に張り付いて取れない。
そして発光はますます強くなり、目を開けていられないほどになる。
「うわぁぁぁぁぁっ」
それが「生出理人」が発した最後の声になった。
光が収まる。一同がおそるおそる眼を開ける。
強い光にやられてまだうまく見えない。
「みんな無事か」
「総統の左腕」佐田が部下に聞く。
「生出先輩が見当たりません」
「何っ!?」
まさかあの光に消されたとかじゃあるまいな?
怪現象を目の当たりにしてそんな発想が出る佐田。
「う……うぅーん」
悩ましげな女子の声がする。
(変だな? この場にいるのは男ばかりのはずだか)
「う……うう……」
今度は少年の声だ。しかしどちらの陣営も聞き覚えのない声。
二つのうめき声は床から聞こえてきた。単純な話、倒れていたのだ。
「だ、誰だ? お前らは。それに生出。生出はどこだ?」
光に消えた同胞がまだ見つからない。
「聞いてるのかい? 生出理人の旦那よ」
「「こっちだよ」」
二つの方向から返事が来た。
「おい。生出。ふざけているなら怒るぞ。どこだ」
「だから私だって言っているでしょう」
「僕ならここだよ。佐田」
うめき声の主たちがやっと姿を見せた。
赤い瞳の「少女」は金色の長い髪を耳の高さで二つに分けたらしていた。
「出ぇたぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「えっ!? 何がっ?」
驚く「少女」。
「ほんと。この作者はツインテール以外に女の髪型知らないのかな?」
「これで何人目だよ?」
「日本の若者なら『もう飽きたよ』というほど出しているよな」
言いたい放題である。
当事者でもあるツインテールの少女の怒りが爆発した。
「うるさいうるさいうるさい。ばーかばーかばーか」
甲高い声で怒鳴る少女。
かなり小柄だ。下手したら150センチないかもしれない。
幼い顔立ちで丸顔ゆえかツインテールが恐ろしく似合っていた。
だが胸は顔立ちに不釣り合いな豊かさだ。Cカップは余裕である。
着ているものは学園指定のスクールブラウス。
その上から胸にワッペンのついた白いブレザーと青いチェックのプリーツスカート。黄色いリボンだった。
一方の「少年」はその場の男子と全く同じ男子制服姿。
美少年と呼んで差し支えない顔立ち。
長からず短からずの髪。長さはともかく目を引くのが髪の色。銀色だ。
少女が赤い瞳なのに対して「少年」は青い瞳だった。
その銀髪だがいわゆる「アホ毛」がひと房『つの』のようになっていた。
「彼」は「少女」を凝視していた。
「スイートハニィ……」
「えっ? いきなりどうした……きゃああああっ」
いい終わる前に「少年」が「少女」に飛び掛かった。
「気持ち悪い!」
驚いていたものの「少女」はすばやい動きで「少年」を叩き落とした。
「男に抱きしめられるなんて冗談じゃない」
男嫌い……もっと違う「生理的嫌悪感」を醸し出していた。
「誰なんだ? 君たちは」
「何言ってんだ。佐田。私だよ。生出理人だ」
少女が「当然」という感じでいう。
「おいおい。君は女の子じゃないか。生出理人はこっちだよ」
少年も言う。
「は?」
一同顔を見合わせる。
「これは仮説なんだが……」
儀式を仕切っていた少年が切り出す。
「彼は『神秘の石』を握りしめた状態で色々口にしていて、そのすべてがかなってしまったんじゃないか?」
「え゛?」
そんな馬鹿な。そう笑い飛ばしたかったが、それができない。
一同は記憶を手繰ってみた。
「彼女を作る暇すらない」という言葉。
これは単純に彼女がほしいととれる。
そして「体が二つほしい」これも同時にかなってしまった。
そこで佐田が気が付いた。
「待てよ……『体が二つ』ということは『生出が二人』という意味になるな。だから二人とも生出なのか」
「そしてそこに『彼女がほしい』という願いが重なった。だからこうなった?」
「私を女扱いするな」
「少女」のほうが抗議する。それに対して質問する佐田。
「あー。それならもう一度聞くぞ。名前は?」
「だから生出理人だといってるだろう」
金属バットでも振り回しそうなけんまくだった。
それともホウキで大崩壊…カタストロフィでも引き起こすポンコツ悪魔か?
本人が否定しても胸の「肉」は雄弁に女性であることを主張していた。
「いいや。君はこの生出理人の彼女だよ。その願いが通じたんだ」
「少年」のほうがゆらりと迫る。まるで冥府の王に憑依されたかのようだ。
あるいはギャルゲーで得た知識で「攻略」する「神」か?
もしかすると単なるFクラスのバカかもしれない。
「近寄るな。
少女のほうは嫌悪感むき出しである。
確かに「男に迫られる男の恐怖」とも取れるが、何しろ見た目が金髪ツインテールの美少女ではノーマルに見える。
「生出の女バージョンと男バージョンが修羅場すぎるな」
「だから私は」
「あー。みなまで言うな。女扱いされたくないんだろ。それならとりあえずお前はアルファ。そっちはベータな」
「佐田さん? なんでAやBとかじゃなくてギリシャ語?」
「分裂といえばギリシャ語だろうが。ホーク一号。ガッツイーグル。クロムチェスター……あれはむしろ逆か」
「というかむしろ」
迫るベータをアルファが邪険にしている。
同一人物だったとは思えない仲の悪さだ。
「まあ『ウデ』なわけだしな」
「くっ。仕方ない。お前が僕を受け入れないというのなら、ほかの女の子を探す」
「あっ。待てっ」
止める間もなく「ベータ」はオカルト研究会の部室を飛び出していった。
あわてて追いかけるが、執行部の何人かはオカルト研のメンツを監視の必要がありその場に残った。
「アルファ」と佐田が追いかけるが、すでに「ベータ」は消えていた。
「おい。生出アルファ。お前ら双子みたいなもんだろ。双子の特殊な絆みたいなもんで、ベータの居所は分からないのか?」
「わかるか」
「ちっ。仕方ねぇ。奴らを使うか」
佐田は一斉メール送信をした。
佐田がメールした相手はいわゆる「幽霊部員」たちであった。
それぞれの部活に入部したものの、理想とのギャップに絶望して幽霊(部員)……ファントムと化したものたちである。
便宜上「ファントム軍団」と呼ばれる面々は生徒会に目を付けられており、無理に部活に出なくていい代わりにたまにこうして使われることがあった。
人海戦術で「ベータ」を探しにかかった。
「ところで……お前サデスパーがモデルなのに『デスパー軍団』じゃなくて『ファントム軍団』使っていいのか?」
「メタ発言はやめろ!」
しばらくして
「シャバドゥビタッチ返信。シャバドゥビタッチ返信」
佐田の携帯電話からメール着信音が鳴り響く。
なぜかレス専用の着信音があるらしい。
「おっ。来たな」
さっそく情報が来た。
とりあえず夜の街で自分たちの学校の男子制服を着た、小柄な美少年を探せと命じて、その目撃情報が寄せられた。
もちろん「見覚えのない生徒」とも指示してある。
おおざっぱだが闇雲に探すよりはましだった。
「あっちだ」
二人は情報のあった方に移動する。
その頃「ベータ」は一人の女生徒の前に立っていた。
「君は……他の女子にはない特別な魅力を持っているそうだね」
ベータの放つ言葉はなんと心が安らぐ。男とは思えない魅力を醸し出していた。
「ひとつ、それを僕に見せてくれると嬉しいのだが」
いわれた女子はとっさに危険を感じて逃げた。戦おうなんて微塵も思わなかった。
地元で迷路のような道になれていたため「ベータ」の毒牙にかけられることはなかった。
「な、な、な……」
硬直している「アルファ」
ここはとある書店。目撃情報のあった場所。
その店頭の雑誌を見てアルファは硬直していた。
「ふむ。ここでエロ本を堂々と立ち読みしてたので印象に残ったか。リビドーに素直なあたり生出の分身らしい話だが……お前は何しているんだ?」
佐田は真っ赤な顔をして固まっているアルファに気が付いて声をかけた。それでアルファの硬直が解けた。
「破廉恥!!!」
「はれんちって、お前これ、ただの水着グラビアだぞ」
「で、でも女子が……こんなに肌を見せて……男にこびて……いやらしいっ」
小学生女子でもないような過敏な反応だ。いくらなんでも不自然なほどウブすぎる。
「もしかして『ベータ』に『男としての性欲』全部を持っていかれたから、お前はそんななんなのか?」
さらに言うと「彼女」としての願いがかなった肉体。「清純さ」を要求されていたかもしれない。
それはこの幼い印象の髪型にも表れている。
「くっ。どうせ持っていくなら、私の男としての部分を全部持っていけば……」
「なるほどなぁ。男が自分の欲望を抑え付ける部分がアルファに押し付けられたわけだ」
佐田とアルファは本屋から離れて、次の目撃情報へと向かいながら分析を続ける。
「どんな男にも少しは女性的な部分があるが、それが全部お前に来た。そしてそれは本来のお前の分裂にもなり、だからお前は『生出理人』としての人格も持ち合わせているということか」
「仮説だけどそんなに違いはないだろうな……そして本来『彼女』としてできた肉体だけに、気を抜くとあっという間に『女の子』になってしまいそうだ」
「なっちまえば楽だろう」
「それは『私』に消えろということだぞ?」
「う……」
絶句した。
分裂した肉体。そして人格。
だが仮説だが、女になりきると男としての部分は消滅すると推測される。
消えたくないというのは自然な心理。
「しかしそれなら奴だって」
「たぶんね。もっとも今は私という『タガ』が外れて好き勝手やるのが優先らしいが」
それを口にしたら野放しにしとけない気もちが強くなる。
二人は自然と早足になる。
夜の十時。さすがに制服姿の女学生は見かけなくなる。
かといってベータは制服姿。成人女性に相手にされることもない。
「まいったな。せっかく自由になれたのに一人も引っかからない」
その時「ベータ」の「携帯電話」がなった。
数分後。「アルファ」の携帯電話もなった。ピンク色ベースで、さまざまなデコレートされた「女子らしいデザイン」のものだ。
相手は父親だった。
一瞬、女の自分が相手に分かってもらえるかと躊躇したが、とりあえず電話に出た。
『女の子がこんな時間まで出歩くなんて危ないから帰ってこい』。そんな内容だ。
返事をして通話を切る。そして
「なんで父さんは私のことを女として認識してたんだ?」
そこに気が付いた。
「そりゃあ……一人の人間が男と女に分裂するなんてデタラメな現象だ。世界そのものが変わっていたりしてな」
つまり最初から二人いたことになっていたようだ。
「ちょっと待て? お前の電話。なんでそんなだ?」
佐田も気が付いた。
「……こんな乙女チックな電話なんて持ってなかったんだが……それこそもともと持っていたことに……はっ!?」
アルファは「電話帳」を見る。その中には「生出理人ベータ」の名前が。
「やっぱり! どうやら携帯電話も二つに分かれたらしい。あっちも同じものがあるようだ」
「ということはメールも送信可能か? ならいい手がある。お前が奴の『彼女』として作られた存在というなら」
佐田の提案を聞いたアルファは真っ赤になった。
しかし被害を出す前に取り押さえようということで、その案を飲んだ。
15分後。
駅をバックに「胸の谷間をちら見させつつ上目づかいで挑発気味なポーズ」をとるアルファの写メがベータの携帯に届いた。
何しろ「彼女」として出てきた存在。ベータにとって最も理想とする女子がアルファなのだ。
食いつかないわけがない。
彼は走った。性欲の命ずるままに。ほとんどケダモノだった。
そして駅に着いた。
「どこだあっっっっ」
「ここよぉん」
わざとらしいほど甘ったるい言葉で、肌を見せたアルファがいた。
「うおおおおっ」
理性を失い飛びかかったところを、待ち伏せしていた佐田と二人がかりで取り押さえられた。
性欲にブレーキがかからなくなったところが、命とりだった。
「くそぉっ。罠かぁっ」
「し掛けといてなんだが、こんな手に引っかかるとは思わなかったぜっ」
「思いつきで人にこんな恥ずかしいかっこうさせるなっ」
涙目のアルファが佐田を怒鳴る。
漫才しながらも取り押さえることに成功した。
佐田も「学園警察」の猛者である。このくらいは軽いものだ。
取り押さえるのと親への状況説明のために、佐田が同行して生出家に出向く。
その眼前には「お屋敷」がそびえていた。
佐田は軽く呆れたようにため息をつく。
「なんど見てもでかい家だよな。これならいきなり一人増えても平気なんじゃねーか?」
「無駄口はいいから説明を頼むぞ。信じてもらえるといいんだが」
杞憂だった。いや。心配して当然の事象なのだが、やはり両親は「元から二人いた」と認識していた。
ちなみに母親は美少年であるベータの。父親は美少女アルファの心配をしていた。
やはり「血は争えない」らしい。
そしてベータのことを「
アルファのことを「
どうやら本当に「双子だった」扱いらしい。
叱られた後でれぞれの部屋に。これも最初から二つあったことになっていた。
「はぁ……疲れた。それにしても……なんだ。この部屋は?」
理人アルファ……否。亜留葉は室内を眺め回してめまいを感じた。
壁の色もカーテンもピンクで統一。
家具はさすがにそうでもないが、水色とか黄緑という柔らかいイメージの中間色が多用されて男のイメージがみじんもない。
クローゼットを開ければワンピースが多数つるされ、引き出しの中にある服はすべて女性用。
しかもズボンの類が全くない。
下着も白やピンクのランジェリーばかり。
また可愛らしいぬいぐるみが多数鎮座していた。
唯一の男性的な印象を醸し出すビデオセットだが、ソフトのほうは恋愛映画か男性アイドル。
典型的な「男のイメージする女の子の部屋」だった。
(これもあの石のせいか? 私を徹底的に女扱いするらしい)
ここでふと気になった。あの石はどこに消えたのだ?
(……まぁいいや。とりあえず明日。風呂に入って寝よう)
その時点では失念していた。
裸身を見れば自分が女の身であることを突き付けられると。
もっとも、もっと衝撃的なものがそれを忘れさせた。
一糸まとわぬ姿になる。
いきさつから行けば「生まれたままの姿」とは言えない。
小柄で華奢だが美しいラインの美少女がシャワーを浴び、そして体を洗い始めて気が付いた。
「何? これ?」
結論から言うとボディピアスだった。
へその横に赤い石がある。
「どうしてこんなものが?」
「やはり亜留葉にもか」
その声に亜留葉は硬直する。
半身というべき理人ベータ…平太が佇んでいた。全裸で。
「べべべべべ、平太!? 今は私が入っているんだぞ」
「何が悪いのさ? 『男同士』なんだろ」
「くっ」
亜留葉の思考を見抜いている。
というより自分の変化から導き出された答えというべきか。
「それよりこっちを見なよ」
裸の平太が自身の下腹部を示す。
「見れるか。破廉恥な」
「そっちは隠しているよ。へそ。へそを見て」
「へそ?」
自分にあった『ボディピアス』もそこにあったがまさか?
亜留葉は恐る恐る平太のいうところを見た。
ちゃんと腰にはタオルが巻いてある。
だから安心してもっとよく見た。
へその横に青い石だった。
亜留葉のがへその右。平太は左。
「面白いね。紫が青と赤に分かれたみたいだ」
なるほど。そうも取れる。
「ならさ。これをくっつけたら僕たち元に戻れそうな気がしない?」
「くっつけるって……それって」
場所がへそだ。肌と肌を重ねることを意味する。
たとえ腹部だけ露出させても密着である。
亜留葉は顔の温度が急上昇するのが自分でもわかった。
「さぁ。一つになろうよ」
迫ってくる平太。その時、腰のタオルが落ちて『男のシンボル』が見えた。
「☆%#$!!!!!!!」
声にならない声を上げる亜留葉。
恐慌状態に陥りながらも、胸と股間を見られないようにショルダータックルで平太を吹っ飛ばした。
「ぶぎゃっ」
ふっ跳んで浴室の外に弾き飛ばされる平太。そのまま気絶する。
亜留葉のほうはそのまま湯船に飛び込む。その動きは男の視線から裸体を隠そうとしているようにしか見えない。
(なんで? 昼間まで自分にもあったものなのに、今見たらとても禍々しく見えた)
それも衝撃的だった。
(本当に私、頭の中まで女なのか?)
のぼせてはいないが、頭がグルグル回ってきた亜留葉である。
翌朝。
二人は「いつものように」登校した。そして
「えー……こんな風になったが、二人で一人の生出理人だ。なので生徒会執行部にはそのままいてもらう」
執行部構成員に説明する佐田の言葉をニコニコしてきいている平太と、苦虫をかみつぶしたような表情の亜留葉。
「亜留葉がいるならどこにでも」
「平太を野放しにはできないから、ここでみんなで監視しなくちゃ」
思惑が一致してこの状態となった。
こうして、そのまま双子の姉弟として学園に在籍することになり「後天性双生児」の話が始まった。
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