更に再び、魔物?
それから更に数日後
ゴリアト・グラスホッパー
魔虫人 D
筋力 1560
神力 300
忍耐力 1000
因果力 500
セットオブジェクト 無し
俊敏6 跳躍8 剣術8 動体捕捉9 自動回復1
詳細
人型をしたバッタ型魔虫。
ステータスはDの魔物だが、知性を保有している事でB相当になっている。
知能は非常に高く、独自の言語を保有する。
群れでの連携を得意としており声帯機関の都合上、人間の言葉を介さないが人間の言葉を理解している。
現在のところ、人間側は彼等の言語解読に成功していない。
また、彼等の筋肉繊維は強靭で収縮性に飛んでおり腐敗し難い事から皮鎧などに用いられる。
バッタの様な脚による3次元的な軌道で敵を翻弄し敵の頭上から獲物を仕留めるのを得意とする。
東に向かう度に敵の縄張りに入っている気がする。
しかも、そんなに間を置く事なくだ。
前回、オリハルコンスネーク狩ってから2日経たない内に別の敵と数日間、殺し合っている。
しかも、今回の敵は少し厄介だった。
戦術を立て、アリシアに挑んで来ている。
アリシアが大太刀化した”来の蒼陽”を取り出すと不要に近づこうとせず、前面から弓兵で牽制と足止めを行い、弓兵を叩こうとすると背後に回り込み、剣を向けて来るのだ。
しかも、剣も中々、業物と隙がない。
気配が全く読めない訳ではないが数が多い。
背後の敵を振り切って弓兵を叩くとバッタとしての跳躍力ですぐに間合いを詰めて来るのだ。
“剣術”はアリシアよりも遥かに劣るが、知能も持った敵だけあり、剣で”来の蒼陽”を受け流す知恵がある。
虫由来の目でアリシアの太刀筋を見切り、”来の蒼陽”を受け流すのだ。
それでもすぐさま斬り伏せるのだが、知恵を持った相手が物量で迫るだけあり、僅かな隙を与えると剣を体に叩き込まれる。
既にアリシアの体には無数の傷を負っている。
“戦神の蒼輝具”とアリシア持ち前の体の頑丈さのお陰で致命的な傷はないが、それでも流血は免れない。
血が滴り落ちていている。
既に傷が治る間も無く、攻撃を受け、血の気が引いている。
既に1000匹以上の屍の山を築いているが、それでも敵は止まる事を知らない。
森の空間と言う空間に敷き詰められた様な敵の密度の前ではアリシアも避けようがない。
出来る事なら敵を纏めて始末したい。
この空間を纏めて焼き払う程の力を行使すれば、出来る。
1つだけ望みはある。
アリシアに備わる”神火炎術”と”神雷鳴術”による複合魔術だ。
これなら広範囲で敵を焼き払えると確信があった。
だが、術が上手く発動しないのだ。
記憶を失った影響なのか以前と違って段違いに威力が低い感覚がある。
技の名前を唱え、認識を明確化しても以前の様な威力が出ない。
何が原因なのか今のところ分からないが、分かっているのは何かが足りないと言う事だ。
少なくともその要素さえ分かれば、なんとかなる。
分かるのは自分が術を撃つ時、何か片手で持てる飛び道具を使っていたと言う手の名残だ。
術を使いたくて思わず、何度か右手人差し指を引くような仕草をしたが、何か違うという違和感だけを残すのだ。
時折、左手で箱の様なモノを持つ仕草をして右手に徐に持っていく仕草もしたが、後、一歩のところで思い出せない。
(何か少しでも思い出せれば……)
その時、アリシアに因果が巡ってきた。
アリシアの正面に複数いる弓兵の中で一体明らかに他とは違う弓兵が現れたのだ。
その技量も他とは違うとすぐに分かるが、持っている装備は他とは違った。
他の弓兵が木で出来た弓に対して、その弓には魔物を倒す過程で何度か見た”触媒石”と言うモノを組み込んだスチールで出来た上等な弓だった。
すると、番えた弓矢が炎を纏ったのだ。
(“神火炎術”の類いかな?)
その様に考え、量子情報の分析に秀でた”〇〇眼・天授”(便宜上、天授眼)で量子情報を見たところ、”火炎魔術のスクリプト”と表示された。
“スクリプト”とは、なんのことか分からないが、確かにその弓兵は弓に神力を流し、アリシアに放とうとしていた。
アリシアは即座にある考えが浮かんだ。
それは忘却されても尚、失われない戦闘における直感による動きだった。
他には目もくれず、その弓兵に突貫した。
弓兵は自分が狙われていると気づいたが、戦いを通して更に強くなったアリシアの脚力で視界から一気に消え、弓兵の首を宙に舞い、弓兵の間合いに入った瞬間、剣を素早く振って衝撃波で弓兵を瞬殺する。
アリシアは宙に飛んだ弓と1本の矢を跳躍してキャッチ、そのまま持ち前の脚力で敵よりも高度を取り、弓を番、神力を最大まで注ぎ込み、唱えた。
「ケラウノス・ブレイズ!」
放たれた矢に纏われた雷鳴が炎の熱で電子運動が加速され、青白い光の雷に変わりら地面に向け、落ちた。
その瞬間、凄まじい衝撃波と周辺の木々を焼き払うほどのジュール熱が森を奔り、暴れ回る。
雷鳴が森の木々に飛来、焼き切り、薙ぎ倒していく。
空気を震わせるほどの雷鳴と広範囲が焼かれ、雷鳴が天空に盛大に放出される。
それに晒された魔物は感電死、無数の屍が散乱する。
雷鳴が止むと戦闘区域を中心に大きなクレーターが出来上がり、痕にはゴリアト・グラスホッパーの無数の焼き焦げた死体が転がっていた。
「く……なんとか倒せたか……」
自分が放った術にやられる事はないとなんとなく分かっていた。
後は”戦神の蒼輝具”の”下位攻撃無効”と言う神術により、飛んで来る破片などを防いだ。
この神術は攻撃と定義できない攻撃と言う概念が薄いモノを下位攻撃と定義付け、それを無効にする事が出来る神術だ。
本来は流れ矢や偶発的なアクシデントに際して発揮する神術ではあるが、技量差があり過ぎた場合、敵の攻撃が下位攻撃として扱われる場合もあると記憶している。
ただ、今分かった事だが、どうも神力の減り方が可笑しい。
結構の高威力を出したが、それに対して神力の消費が多過ぎる。
全力は出したが、全力の3倍は持っていかれた感覚だ。
物凄い倦怠感で倒れそうだ。
(いや、倒れる……)
アリシアはその場に倒れ込んだ。
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