RWNC
「良いですか。あのアマテラスにはZWN式の神術を封じ込める作用があるようです」
アリシアは判明した情報をネクシレイター間で使えるテレパシーで伝える。
これなら僅かな時間で多くの事を確実に伝えられる。
尤も普段は使わない。
SWNの干渉の多い地球上で使うには妨害が多過ぎる。
加えてサタンに多くの情報を盗聴されるリスクもあった。
だが、この距離ならネクシレウスにより増幅されたアリシアのZWNの干渉領域が強い為、盗聴も妨害のリスクもない。
「どうやら敵はオルタ回路を反転させ、擬似ネクシレイターを作り出し、そのシステムにWNを制御させているようです」
それに正樹が首を傾げ疑問に投げかける。
「反転ってどう言う事だ?オルタ回路ってのはネクシルに搭載された量子回路の劣化版なんだろう?それを反転させるとなんでネクシレイターが作れるんだ?」
「量子回路全般に言える事だけど、使い続けると使った本人に最適化されていくんだよ。元々、無印の生命体の魂に近い回路だから赤子同然なんだけど使う事により使用者の意識なんかを模倣して成長する傾向があるんだ。それが疑似TSだよ」
「つまり、量子回路そのモノが生きているって事か?」
「私達のネクシルはその性質を利用してTSと量子回路を馴染ませてTSを主人格に成長させている。TSも量子回路も使用者の魂を参考に最適化すると言う特性は似てるから」
「なるほど、量子回路は第2の自分自身と事か……あぁ、なるほどそう言う事か」
正樹の中で情報の点と点が繋がった。
「つまり、オルタ回路には使用者の擬似人格が宿っていてそれが悪魔ならその反転は……」
「天使、つまりはネクシレイターに近い存在になる。ネクシレイターの方が事象制御能力が高いからオルタ回路を反転させて完全とは言えないネクシレイターを擬似的に作り、それを制御ユニットに操作させているというのがカラクリだよ」
だが、ウィーダルの中である疑問が浮かんだ。
「だが、奴らはSWNを使う。擬似ネクシレイターに操作させるにしても相性が悪くはないか?」
ネクシレイターは確かにWNの制御を得意とするが、SWNの制御は自身を傷つける行いに等しい。
ZがプラスならSはマイナスだ。
制御出来なくもないが、負担をかなり強いるのだ。
「あの人達は
「なるほど、確かにそれならば可能か……では、隊長殿これからどうように攻める?」
「現状、神術を使った光学兵器はあまり効果が無い。各機、実弾兵装に換装。散開しながら、指定したポイントに攻撃して」
アリシアはこの時点で”汎用戦術コンバット9”をセットした。
その作戦にウィーダルがある疑問を持つ。
ここは散開と言う防御的な手ではなく攻めるべきではないのかと言う疑問だ。
「なんとも防御を優先したような布陣だが、大丈夫なのか?」
「問題ありません」
アリシアの考えは読み取れないが勝利を確信したような雄弁さが断言的にそう答えた。
ウィーダルはそれ以上、聞かず「了解した」とだけ答えた。
アリシアの考えは常に先を見据えている。
その点はウィーダルよりも長けているのは確かだ。
だからこそ、信頼しているのでウィーダルは何も言わなかった。
各機体は散開しながらデータリンクで共有されたポイントに向け、攻撃を開始した。
ユウキはアマテラスをその場から動かさず、迎撃用のレーザーを各部から発射して応戦する。
「ここであいつらを沈めて計画を完遂する」
ユウキはレーザーの攻撃パターン読み取らせまいと随時、変更しながらレーザーを撃つ。
海面から水蒸気を出しながらレーザーが迫り、それがアリシアや正樹目掛けて飛んでくる。
そして、接触直前に複雑なランダムパターンでレーザーを小刻みに動かし、回避困難な攻撃を仕掛ける。
だが、アリシア達はまるで全て見えているかのように見切り、確実に避けていく。
「チッ!化け物め!平然と避けてくれる」
並みのパイロットなら見切れないような軌道を恰も出来て当然と言わんばかりに確実に避けている。
それが無性に腹立たしい。
自分が組み上げたパターンを批難されているようで不快だった。
しかも、敵はさっきから同じ場所ばかりを狙う。
その場所はRWNCのある箇所だ。
「全部、お見通しと言う事ね」
敵の狙いが実弾兵器によるバリア減衰後のポイント箇所の破壊だと分かる。
恐ろしい事にさっきから敵のすべての弾丸が同じ場所ばかりに当たっている。
「さて、なら久しぶりにこのカードを切らせてもらいます」
アリシアはそう言って左のマウントハンガーを介して、”空間収納”なら銃身が肉厚となったG3SG-1バトルライフルを取り出す。
それはかつてアリシアがバビ解体戦争時にルシファー擬きに使ったライフルの改良型だった。
G3系の堅牢な内部構造を更に改良して、炸薬の強い小型ビッグバンを使用した上で従来火器の上を行く連射性を獲得した。
バビ解体戦争時は試験的な急造品レベルだったが、既に実戦レベルまで昇華した”G3SG-1マシンバトルライフル アリシアカスタム”と呼べるライフルに進化していた。
「あの時とは違います。途中で止まる事は無い!」
アリシアは引き金を引き無数の弾丸がアマテラス目掛けて飛んでいく。
それが全く同じ場所に向かい恐ろしい、連射能力で無数の弾丸がバリアに激突する。
アマテラス側の出力パラメーターが急激に変動、出力が一気に90%から60%にまで低下する。
WNコンバーターを動力とするアマテラスのWNの吸収量を上回る速度で出力が削れていく。
「くそ!AP隊、発進!敵APを撃破しろ!」
ユウキの指示によりアマテラスに格納されていた中隊規模のAP隊が出撃した。
その機体はユウキの因果律兵器ユニットを運用する為に用意されたロア・ムーイのネクシルを参考に設計されたネクシル・ペプロメノと言うネクシル系のパーツを複製して製作した青、白、金を基調としたトリコロールカラーの機体だ。
「ユリアに使ったあの技術か……しかも、ユリアと違って乗り気ですね」
アリシアはかつてユリアに施された技術を利用したAP部隊を見つめ、呆れ返る。
彼等は理由に差異はあれば、ユリアと違い完全に乗り気でこちらに攻めて来ている。
それも本人の意志でだ。
自分達を絶対強者、絶対正義になったように自惚れ攻めてくる。
しかも、ユリアの時よりもHPM下でも確実な稼働出来るようになっている為、戦闘時間も延長されている。
「ネクシル8。APは任せます。ウリエル・フテラ!攻勢に出て!」
アリシアはAP部隊を正樹に任せ、アリシアとウィーダルでアマテラスへの攻勢に転ずる。
ウリエル・フテラは前方左右にある880mm実弾主砲”ドレッドノート”を展開した。
“ドレッドノート”は単発の命中性が高く、高い殺傷性を有しており、光速に迫る速度で30万kmの射程を有し、太陽を2、3個破壊できるだけの威力を持つ。
アリシアを含め、ウィーダル達の火力に抜かりはない。
「あぁ、任された!」
正樹は敵のAPを撃墜すべく右手にHOWA Type39アサルトライフルを構え、セミオートで連射する。
だが、敵はまるで正樹のライフルモーションを見ているように射線から消え、それを読んでいた正樹の2発目、3発目の弾丸を避ける。
「な!避けた!」
完全に見切った上で放ったはずが1発も当たらなかった。
敵が人間なら今の攻撃を避けられなかっただろう。
だが、敵は人間とAIとの融合を果たした存在だ。
確かに人間的な癖を残してはいるがAIのような精確さと反応速度がある。
通常の敵に比べれば、正樹の不意打ちのような攻撃も高速で演算、弾道を予測して人間離れした速度で避ければ、容易に避けられる。
その事を撃った後に気づいた。
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