要塞突入

 中国 吉林の山中




 輸送経路のトンネルの中に現れた無人戦車など撃墜しながら、前に進んでいく。

 トンネルの中と言うのもあり、高い機動性を活かした戦闘はやり難く、ショットガンなどを撃たれると非常に厄介だった。

 尤も、ネクストの膂力があれば剣先の衝撃波で全部吹き飛ばせるので対策できないわけではないが、跳弾したりすると厄介ではある。


 敵もこの狭い通路ではショットガンが有効だと判断してか、その手の類の兵器を多く使ってくる。

 その度にアリシアが刀の衝撃波で全て吹き飛ばし、千鶴がM134型ガトリング砲で一掃する。

 それを繰り返しながら、奥へ奥へと進んでいく。




「それにしても……凄いモンよね」


「ん?何がですか?」


「色々よ。この要塞の規模のそうだけど、ネクストの性能とかあなたの戦闘技術とか色々、凄いな……て」


「姉様だって、訓練すれば、できますよ」


「そう言うモノ?もう才能も絡んでいると思うけど?」


「そんな事はないですよ。わたしはリテラ達に比べたら才能はありません」


「えぇ?いやいや、それは無いでしょう!あなたの動きとか逐一観察してたけど、才能が無いはないでしょう」


「わたしは才能を貰っただけに過ぎません。それが自分の者になるように努力しただけの凡人ですよ」




 千鶴にはその意味が分からなかった。

 アリシア・アイと言う少女は間違いなくトップクラスの実力がある。

 確かに凄い努力をしたのは動きを見れば、よく分かる。

 だが、才能が無いと言うのは違う気がした。

 才能を与えて貰ったと言う趣旨も千鶴にはよく分からなかった。


 それは才能を後天的に手に入れたと言う意味だろうか?

 それはそれで一体、どんな努力をしたと言うのだろうか?

 どれだけの血の滲む努力をすれば、その域に達したのだろう?


 そこに純粋な興味があった。

 彼女の場合、改造手術とか遺伝子操作と言うチートで手に入れた才能でないのは一目で分かる。

 そう言う奴らとは匂いが違う。

 そう言う奴らとは違い不純の無い精錬された人間の持つ独特の雰囲気がある。

 彼女の才能とやらの彼女の努力によるモノだろう。


 だが、才能がない凡人が才能を手に入れる為には本当に険しい剣山のような道を通ったに違いない。

 だが、アリシアはそんな辛酸苦痛を味わっていながら、純真無垢でいつも笑って、つぶらな瞳でこちらを見るのだ。





(滅茶苦茶健気で良い娘じゃない!)






 千鶴の中で彼女に対する好感度が上がる。

 母性みたいなモノが燻ぶる保護欲を思わず、芽生えさせる。

 強くてカッコよくもあるが、どこか可憐で幼い彼女へのギャップが何とも駆り立てる。




「姉様、どうかしました?」


「えぇ、どうしたって何が?」


「急に喋らなくなったから……」


「いや、何でもないわ。考え事をしてただけよ」




 そんな風に話していると要塞に繋がるエレベーターを発見、それをハッキングして要塞内部に向かう。

 その道中でCPから自分達以外の潜入部隊は輸送トンネル内で全滅したと報告を受けた。




「マジか……これは余計に引けなくなったわね」


「これは意地でも任務をやり遂げるしかありませんね」




 とは、言え大丈夫だろうか?とアリシアは不安が過った。

 千鶴は問題ないようだけど、アリシアのネクストは実は少し問題が起きていた。

 アリシアの身体能力を最大限に活かそうとすると毎秒で発生するコンバーター出力を超え、機体の動きが何度か鈍くなっているのだ。

 エネルギーを管理しながら戦っているが、ここからの相手にそれが通じるかは微妙だ。




(しばらくは射撃武器主体で戦うしかないかな……)




 アリシアは戦闘方針を固め”射撃戦術3”と言うオブジェクトをセットする。

 やはり、オンアクチュエーターはただでさえ、エネルギーを食う上に高負荷な戦闘になるとアクチュエーターの出力も上がり、出力不足になりがちだ。

 全力でアクチュエーターを使いながらスラスターを噴かせると一気にエネルギーが無くなってしまう。

 これでも他のAPよりはマシではあるのだが、やはり改良の余地があったようだ。

 帰ったら整備班と要相談になるだろう。

 そうしてエレベーターが最上階に到達するとそこは大広間になっており、そこにはところ狭しと無人APの大群が並んでいた。

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